【日本語の連濁】ライマンの法則とは何か?その例外とは

ライマンの法則(Lyman’s Law)とは?

「ふゆ(冬)」+「たく(支度)」は「ふゆたく(冬支度)」になりますね。

2つ目の語「たく」の「」が「」に濁音化します。

でも、「ふゆ(冬)」+「ょうぐん(将軍)」は「ふゆょうぐん(冬将軍)」です。

「ふゆょうぐん」と「」に濁音化しません。

 

もう一つ、例を見てみましょう。

「ふゆ」+「れ(枯れ)」は「ふゆれ」で、2つ目の語「れ」の「」が「」に濁音化します。

でも、「ふゆ」+「ぜ」は「ふゆぜ」と連濁化しません。

 

なぜでしょうか?この謎を説明してくれるのが「ライマンの法則」です。

 

二つの語が結合するときに、後ろの最初の清音が濁音化することを連濁といいます。

例えば、「ふゆ(冬)」+「たく(支度)」は、「ふゆたく(冬支度)」になります。

後ろの語(「たく(支度)」)の最初の語(「」)が濁音化する(「」になる)ので、連濁しています。

 

ただ、後ろの語に既に濁音が含まれている場合、連濁は起こりません。これを「ライマンの法則」と言います。

 

「ふゆしょうぐん」の場合、2つ目の語「しょうん」に既に「」という濁音が含まれています。

「ふゆかぜ」の場合も、2つ目の語「か」に「」という濁音が含まれていますね。

この場合「ふゆょうぐん」「ふゆぜ」と連濁はせず、「ふゆょうぐん」「ふゆぜ」になります。

 

1つの単語に2つの濁音が入ることを嫌うんですね。

新しい語を作るときも同様になります。

「いぬ」+「とば」の場合、「いぬとば」といい、「いぬとば」とは言わないと思います。

一方、「いぬ」+「ころ」や「いぬ」+「こち」の場合は、「いぬころ」「いぬこち」と、後ろの語の冒頭の「こ」を濁音化させるのではないでしょうか。

自然とこのライマンの法則を身に着けているというのが面白いですね。

 

ベンジャミン・スミス・ライマン

なぜライマンの法則かというと、ベンジャミン・スミス・ライアン(1835年 – 1920年)が発見したからです。

(厳密にいうと、既に賀茂真淵や本居宣長などがすでに18世紀にこの法則について述べていることがわかっているので、ライマンはそれを再発見した形になります。)

Benjamin Smith Lyman 1917.png

ライマンは、アメリカのマサチューセッツ州で生まれ、パリやドイツで鉱山学を学びました。

明治時代の1873年から1880年まで、お雇い外国人として招かれ、北海道をはじめ日本各地の石炭・石油・地質調査にあたりました。

彼は地質学・鉱山学が専門で、鉱山技術者だったのですが、日本語についても考察を残していました。その一つが「ライマンの法則」です。

 

なお、ライマンの法則という名称が定着したのは、連濁関係の論文が多く出た1970年代です(鈴木 2005, p. 250)。

ちなみに、ライマンは連濁に関して4つの規則をたてていますが、その1つ目のみがライマンの法則と呼ばれています(鈴木 2005, p. 250)

 

 

ライマンの法則の例外

ライマンの法則は広範囲の語にあてはまり、例外が少ないのですが、例外がないわけではありません。

なお、ライマンの法則は「後続の語に既に濁音が含まれている場合、連濁(=後続の語の最初の音が清音から濁音にならない)は起こらない」というものでした。

例外は、「後ろの語に濁音が含まれているにもかかわらず、後ろの語の最初の清音が濁音化する場合」になります。

 

例外としては、以下のようなものがあげられています(鈴木 2005, p. 252より一部抜粋)。

  • なわ(縄梯子)
  • れいみ(礼手紙)
  • わか(若白髪)

とはいえ、「礼手紙」と「若白髪」は「れいがみ」「わからが」と濁音化しない方の読み方のほうが一般的ですね。

 

他には、撥音「ん」がある場合もあります(鈴木 2005, p. 252より一部抜粋)。

  • ふんじばる(踏縛る)
  • れんざぶろう(練三郎)、しょうざぶろう(庄三郎)、かんざぶろう(勘三郎)

 

ライマンの法則の例外として、よくあげられるのは「なわばしご(縄梯子)」だと思います。

 

まとめ

ライマンの法則について簡単に説明しました。

ご興味のある方は、以下の記事もご覧ください。

 

日本語の音声に興味のある方は以下の本などがおすすめです。

  • 川原繁人(2022)フリースタイル言語学. 大和書房

↑川原繁人は音声関係で多数執筆しています。ポケモンやメイド喫茶のメイドなど身近なトピックを取り上げています。この本でもライマンの法則について少し触れられていました。