この記事では、言語学におけるコピュラについて説明します。
コピュラとは?
言語学においてコピュラ(copula)とは、文の主語と述語を結ぶための品詞を意味します。
もともとはラテン語の言葉で、「一緒に」を意味する「co-」と、「くくりつける」という意味の「apere」が組み合わさってできました。
日本語では、繋辞(けいじ)や判定詞と言われることもあります(ただ、繋辞をコピュラとすることに疑問を呈する研究者もいます(奥津 1978))。
「A=B」の関係が成り立つ場合、この「A」と「B」を結ぶものがコピュラであると説明されることが多いです。
例えば、「I am a student」の場合、「I = student」という関係が成り立ちます。
「I」と「student」を結んでいる、be動詞の「am」がコピュラになります。
英語におけるコピュラ
英語において、代表的なコピュラはbe動詞です。
- He is tall.
- She is a student.
この二つの文では、「He = tall」、「She = student」という関係が成り立ちます。
be動詞は主語である「he」や「she」と、補語である「tall」や「student」を結び付けています。
なお、英語の場合、動詞がコピュラの役割を担うため、linking verbs(連結動詞)と呼ばれることもあります。
be動詞以外にも、英語でコピュラに含まれる動詞には以下のようなものがあります。
seem、appear、look、sound、taste、smell、feel、become、get
以下の文を見てください。
- She seems angry.
- She looks happy.
- This idea sounds good.
- This food tastes delicious.
- I feel okay.
- I become a doctor.
これらはすべて「A = B」の関係が成り立つと考えられます。
コピュラの動詞は、補語をとりますね。
例えば、「She seems angry」「she looks happy」の場合、「seem」や「look」という主観的判断ではあるものの、「She = angry」「She = happy」という関係が成り立つと考えます。
なお、be動詞の場合は、「A = B」の関係は事実として提示されていました。
上記の動詞の場合は、事実としては提示されていないので、少し違和感がある方もいるかもしれません。
また、同じ動詞でも、文によってはコピュラとみなされないケースもあります。
例えば、「look」という動詞は、「she looks happy」の場合は、「she = happy」でコピュラになります。
ただ、同じ「look」でも、「She looks at a camera(彼女はカメラを見た)」の場合は、「She = camera」ではないため、コピュラになりません。
他の動詞も同様です。「This cheesecake tastes good」の場合の「taste」は、「cheesecake = good」でコピュラになります。
ただ、「he tasted the cheesecake」の場合は、「he = cheesecake」でないため、コピュラにはなりません。
日本語の場合
日本語の場合、コピュラの代表例として、「だ」があります(「だ」の丁寧体である「です」も含まれます)。
「代表例」と書きましたが、私自身は、日本語のコピュラというとき、「~だ/です」以外では、聞いたことがありません。
学術論文検索サイトのGoogleScholarで、「Japanese copula」で検索してみましたが、私が調べた限りだと「だ/です」以外を扱ったものはないようです。
「だ」の例を見てみましょう。以下の文を見てください。
- 私は学生だ。
- 彼は天才だ。
この場合、「私=学生」「彼=天才」という関係が成り立ちますね。
なお、日本語の場合、「だ・です」を使っていても、「A = B」の関係が成り立たないケースも多数あります。
例えば以下の文を見てください。
- 部屋は3階だ
- A: 「パソコンは、何を使っている?」 B: 「私はMacです」
この場合、「部屋が3階にある」、「私はMacを使っている」という意味で、「部屋=3階」「私=Mac」ではありません。
こういった文は「うなぎ文」といいますが、うなぎ文で使われる「だ・です」は、コピュラとは考えにくいです。
(詳しくは「日本語文法でよく出てくる「うなぎ文」とは何か?」をご覧ください)
また、日本語では、「わかってますよーだ」のように、特にあえてつける必要がないのに、「だ」をつけるケースもあります(メイナード 2008)。
これもコピュラとは考えにくいケースだと思います。
まとめ
この記事では、英語・日本語のコピュラについて簡単に説明しました。
まとめると以下のようになります。
- 言語学においてコピュラ(copula)とは、文の主語と述語を結ぶための品詞をいう
- 英語の場合の代表的なコピュラはbe動詞。また、seem、appear、lookなど補語をとる動詞もコピュラに入れられる。
- 日本語の場合の代表的なコピュラは「だ・です」。
何かのお役に立てれば幸いです。
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