四つ仮名とは
この記事では、四つ仮名とその使い分けのルールについて説明します。
四つ仮名というのは「じ」「ぢ」「ず」「づ」の四つの仮名のことです。
現代日本語では、(1) 「じ」と「ぢ」、(2) 「ず」と「づ」は発音が同じです。
人によっては、「いや、この2つは違う」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、現在の「ざじずぜぞ」「だぢづでど」は国際音声記号で、以下のように表記され、区別はされていません。
ざ [dza] じ [ʤi] ず [dzɯ] ぜ [dze] ぞ [dzo]
だ [da] ぢ [ʤi] づ [dzɯ] で [de] ど [do]
では、なぜ同じ発音なのに異なる表記があるのでしょうか?
そして使い分けはどうなっているのでしょうか?
四つ仮名の歴史
理由は「だぢづでど」(ダ行)の音の変化にあるといわれています。
奈良時代ごろは「だぢづでど」は「だ・でぃ・どぅ・で・ど」と発音されていました。
ただ、その後、「ぢ」「づ」の [d] の音が、 [dz]という音(現在の「ぢ」「づ」の音)へと変化していきました。
いつ起こったかははっきりはわかっていないそうですが、16世紀ごろにはその変化が完了していたようです(衣畑 2019, p. 55)。
16世紀ごろのキリシタン資料では「ダ」「デ」「ド」を da、de、doと書いている一方、「ヂ」は gi、「ヅ」は zzu(dzu)とつづっていたという記録もあります(衣畑 2019, p. 56)。
つまり、「ぢ」「づ」の音が変化したことにより、「じ」「ず」の音と合流したというのが、現在の四つ仮名になります。
使い分けのルール
同じ発音なのに、表記が「じ」「ぢ」、「ず」「づ」と2つの異なるものがあるため、混乱が起きました。
そこで、表記の原則を決めたのが、現代仮名遣いです。現在は1986年に内閣告示されたものが使用されています。
基本は、「じ」と「ず」のほうを使います。
なので、迷ったら「じ」か「ず」のほうを使うほうがいいかもしれません。
では、「ぢ」と「づ」はいつ使うのかというと、以下のような場合に使うとしています。
① 同音が連続するとき
まず、「ちぢ」や「つづ」と音が続く場合です。
以下の例があります(「現代仮名遣い」より抜粋)。
つづみ(鼓) つづら つづく(続) つづめる(約△) つづる(綴*)
② 2つの語が組み合わさったとき
次は二つの語が組み合わさった場合です。
日本語で複合語を作る場合、後ろの語の語頭が濁音化することがあります。
例えば、「鼻(はな)」+「血(ち)」→「鼻血(はなぢ)」です。
この場合、「ぢ」を「じ」に変更させて「はなじ」にするのではなく、元の語である「血(ち)」の表記のまま、「ぢ」と表記します。
以下の例があります(「現代仮名遣い」より抜粋)。
いれぢえ(入知恵) ちゃのみぢゃわん
まぢか(間近) こぢんまり
ちかぢか(近々) ちりぢり
みかづき(三日月) たけづつ (竹筒) たづな(手綱) ともづな にいづま(新妻) けづめ ひづめ ひげづら
おこづかい(小遣) あいそづかし わしづかみ こころづくし(心尽) てづくり(手作) こづつみ(小包) ことづて はこづめ(箱詰) はたらきづめ みちづれ(道連)
かたづく こづく(小突) どくづく もとづく うらづける ゆきづまる
ねばりづよい
つねづね(常々) つくづく つれづれ
③ その他
ただ、判断がつきにくいものも多いです。
この場合は、本則は「じ」「ず」だが、「ぢ」「づ」も許容するとしています。
例えば、「稲妻」という語は、「稲(いね)」+「妻(つま)」と二つの語が合わさっています。
2つの語が合わさってできているので、「稲妻(いなづま)」と表記してもよさそうです。
ただ、現状では「稲妻」は、2つの語が組み合わされて作られた語というより、「稲妻」という1つの語と扱われることが多いです。
この場合は、「いなずま」と基本は書くが、「いなづま」も許容するといっています。
以下の例があります(「現代仮名遣い」より抜粋)。
いなずま(稲妻) かたず(固唾) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく
うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく
あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく
うでずく くろずくめ ひとりずつ
ゆうずう(融通)
まとめ
四つ仮名とその使い分けのルールについて簡単に紹介しました。
日本語の表記にご興味のある方は以下の記事もご覧ください。