日本語の複合語
複合語とは、2つ以上の語が組み合わされて作られた語のことです。
複合語の例としては「山登り(山+登る)」「雨水(雨+水)」「走り回る(走る+回る)」「蒸し暑い(蒸す+暑い)」などがあります。
日本語の複合語には以下のような特徴があります。
① 後ろに来る語がその複合語の品詞になるのが原則
複合語は、「名詞+名詞」「名詞+動詞」「形容詞+名詞」など様々な品詞の組み合わせで作ることができます。
ただ、作られた複合語の品詞は後ろに来る語のものになるのが原則です。
例えば、「飲み物」という複合語で考えてみましょう。
これは、「飲む」という動詞と、「物」という名詞を組み合わせて作られています。
「飲み物」という複合語の品詞は、「物」という後ろに来る語の品詞と同じで、「名詞」になります。
また、「裏返す」という複合語は、「裏」という名詞と、「返す」という動詞を組み合わせて作られています。
「裏返す」の品詞は、後ろにくる「返す」という語の品詞と同じで、「動詞」になります。
② 前にくる動詞・形容詞・形容動詞の語は形が変わる
動詞、形容詞、形容動詞が前項に来る場合、形が変わります。
動詞は、以下のように語幹(「~ます」の形の前の部分)になります。
- 乗る→乗り(例:乗り物)
- 吊る→吊り(例:吊り橋)
- 浮く→浮き(例:浮き輪)
形容詞(イ形容詞)・形容動詞(ナ形容詞)は、以下のように語幹(最後の「~い」または「~な」をとる形)になります。
- 長い→長(例:長雨)
- 暑い→暑(例:暑苦しい)
- わがままな→わがまま(例:わがまま息子)
- 安全な→安全(例:安全運転)
③ 複合名詞は意味役割が「動作主」の語とは複合しにくい
複合名詞は、意味役割が「動作主」の語とは複合しにくいと言われています(岡﨑他 (2017) 『ココが面白い! 日本語学』第2章)。
例えば、「OB訪問」という複合語だと、意味は「OBを訪問する」という意味に取ります。
「OBが訪問する」という意味にはとりません。
「父親殺し」という複合語だと、「父親を殺した」と解釈され、殺されたのは「父親」です。
「父親が殺した」という意味にはならないと思います。
「OBが」や「父親が」というのは、「訪問する」「殺した」という動作を行う動作主になります。
意味役割が動作主の場合は、複合語を作りにくいです。
ただ、「社長主催のイベント」など、例外もあります。この場合「社長が主催するイベント」という意味で、社長が動作主になっていますね。
④ 連濁や転音がよくおきる
複合語をつくるとき、以下のように後の語が濁音になり、連濁が発生することがよくあります。
- 本(ほん)+棚(たな)→本棚(ほんだな)
- 目(め)+覚ます(さます)+時計(とけい)→目覚まし時計(めざましどけい)
ただ、「手足(てあし)」「左右(さゆう)」「勝ち負け」など、意味が並列関係(同列のものの組み合わせ)のときは、連濁はあまり起きないです。
また、前の語の最後の音がア段やオ段になり、転音することもあります。
- 雨(あめ)+ 音(おと)→ 雨音(あまおと)(「め」→「ま」)
- 木(き)+ 陰(かげ)→ 木陰(こかげ)(「き」→「こ」)
まとめ
日本語の複合語の特徴について以下の4つを紹介しました。
② 前にくる動詞・形容詞・形容動詞の語は形が変わる
③ 複合名詞は意味役割が「動作主」の語とは複合しにくい
④ 連濁や転音がよくおきる
何かの参考になれば幸いです。
ご興味のある方は以下の記事もお読みください。
専門書になりますが、複合語について詳しく知りたい方は以下の本が有名です。