言語と方言の違いについて

言語と方言の区別について

「言語」と「方言」の区別をするのは実は簡単ではありません

 

日本国内でも、琉球諸語の扱いなどはかなり微妙なラインです。

2009年にユネスコは、世界で約2500の言語が危機にさらされていると報告しました。

日本国内では、アイヌ語の他、沖縄の八重山語、与那国語、沖縄語、国頭語、宮古語、鹿児島県の奄美諸島の奄美語、東京都の八丈島の八丈語が「危機に瀕している言語」としてリストに入れられました。

琉球諸語等が「方言」ではなくて「言語」として扱われたことに驚きの声もあったようですが、ユネスコの担当者は「これらの言語が日本で方言として扱われているのは認識しているが、国際的な基準だと独立の言語と扱うのが妥当と考えた」と回答したそうです。(参考:朝日新聞『世界2500言語消滅危機、ユネスコ「日本は8語対象」』2009年2月20日)

 

では、「言語」と「方言」を区別するものは何なのでしょうか?

 

①相互理解可能か(mutual intelligibility)

言語学的には、相互理解可能かというのが大きな基準となります。

 

関西弁は日本語の方言の一つと認められています。

日本語の標準語を理解できる人は、関西弁を聞けばだいたい意味がわかります。

また、文法も「たべへん」→「たべない」、「聞かへん」→「聞かない」と規則的に変換できますね。

 

ただ、この「相互理解可能か」という基準も判断が難しいことも多いです。

以前、青森に移住した友人が「青森弁が聞き取れない」と言っていました。では、聞き取れないから青森弁は方言ではなく、言語なのでしょうか?

どのレベルでもって相互理解可能でないとみなすのか、線引きが難しいのものは多数あります。

 

なお、この相互理解可能かという基準をもとに、ユネスコは琉球諸語等を「方言」ではなく、琉球諸語等を「言語」をみなしたようです。

 

②社会政治的要因

また、現実世界では、社会政治的要因を考える必要があります。

イディッシュ語学・言語学者であるマックス・ヴァインライヒ(Max Weinreich)の以下の名言は有名ですね。

A language is a dialect with an army and a navy(言語とは陸軍と海軍を備えた方言である)

 

例えば、デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語は相互に理解可能と言われています。

マレー語やインドネシア語も近年は差が広がっているものの、基本は理解可能だと言われています。

でも、これらが別言語として扱われるのは、国家としてそれぞれの言語を「言語」として確立してきた歴史的経緯があったからだと考えられます。

 

一方、広東語と北京語は、相互には理解不能といわれていますが、広東語は「中国語の方言」と分類されることも多々あります。

 

まとめ

「言語」と「方言」の区別について簡単に紹介しました。

何かのお役に立てれば幸いです。

↑日本語の方言学について興味のある方はこのような入門書もあります。

 

↑どう言語として整備・確立させていくかという点では言語政策関係の本もおもしろいと思います。著者のSpolskyは言語政策関係で多数執筆しています。