参考書
コーパス言語学を専門にする知り合いが「Lexical Bundles」(単語連鎖)について研究していると言って、私には「lexical bundles」という言葉自体が初耳だったので、Lexical bundlesとコロケーションの違いについて教えてもらいました。
以下は知り合いの説明と、下記の本に掲載されていた「Biber and Conrad (1999) Lexical Bundles in Conversation and Academic Prose」の中の記載を参考にして書いたものです。(ただ、いろいろな定義があり、人によって使い方も違うようです)
- Biber, Douglas, and Susan Conrad. “Lexical bundles in conversation and academic prose.” in. H. Hasselgard & S. Oksefjell (Eds.), Out of corpora (pp. 181–190). Amsterdam: Rodopi.
イディオム
以下の表現をみてみてください。
- kick the bucket (=死ぬ)
- bear in mind(=覚える)
- around the bush (=遠回しに言う)
なぜバケツを蹴ったら「死ぬ」という意味になるのか、なぜ茂みの周りが「遠まわしに言う」という意味になるのか、想像できないと思います。
イディオムとは、その表現を構成する一つ一つの単語(「kick」「bucket」「bush」など)から表現の意味が創造できない、比較的一定の表現のことをいいます。(Biber and Conrad 1999, p. 183)
日本語では慣用句と訳されることが多いようですが、ちょっとニュアンスが違うみたいです。
コロケーション
ある単語とよく使われる組み合わせやつながりのことです。
例えば、「みかん」という単語とよく使われる表現だと以下のような組み合わせがあると思います。
- みかんを食べる
- こたつの上のみかん
- くさったみかん
- みかんを買う
Biber and Conad の例では(p.183)、「little」と「small」という単語を挙げていました。
Littleは以下のような言葉と共起しやすいです。
- baby
- bag
- bit(s)
- boy(s)
- devil
これに対し、smallは以下のような言葉と共起しやすいです。
- amount(s)
- letters
- part
- piece
このような、ある単語とよく共起しやすい単語・表現をコロケーションといいます。
Lexical bundles(単語連鎖)
よく出てくる単語のつながりですが、コロケーションより長いもののことです。
例えば以下のようなものがあります。
- do you want me to
- I said to him
- in the case of the
- what I want to do is
- those of you who
- I just kind of
これらは完全な文ではなく、慣用句や決まり文句でもありません。さらに、普段自然に使うので見落とされがちで、直感でではなくコーパスを通して実証することで分かっていくことが多いようです。
イディオムとの違いは、イディオムは日常で必ずしもよく使われるわけではないのに対し、lexical bundlesは、日常(またはある場面)で頻出する単語のつながりのことを指すそうです。
こういうlexical bundlesは言語学習でかなり役にたちそうだと思いました。
まとめ
コーパスに興味がある方は以下のような日本語の入門書もあります。
- 李在鎬・石川慎一郎・砂川有里子(2018)「新・日本語教育のためのコーパス調査入門」くろしお出版
- 赤野一郎・投野由紀夫・堀正広(2014)「英語教師のためのコーパス活用ガイド」大修館書店