ピッチアクセントとストレスアクセント
ピッチアクセント(pitch accent)とストレスアクセント(stress accent)の違いについて簡単に紹介します。
簡単にまとめると以下のようになります。
- ピッチアクセント:音の高低によるアクセント
- ストレスアクセント:音の強弱によるアクセント
なお、アクセントとは、語ごとの音の高さや強さのことです。
勿論個人差もありますが、それぞれの言語や方言で語の読み方というのは慣習的に決まっています。
例えば、日本語の共通語で「犬」を発音する場合、「い」が低くて、「ぬ」が高くなります。
共通語を話しているときに、「い」を高くいって、「ぬ」を低く言うと、違和感を覚える人も多いでしょう。
ただ、言語によって、音の高さに着目する場合と、音の強さに着目する場合があります(どちらにも注目する言語もあります)。
音の高低でアクセントを示すことをピッチアクセント、音の強弱でアクセントを示すことをストレスアクセントといいます。
ピッチアクセントとは
ピッチアクセントとは、音の高低によるアクセントのことです。
「高さアクセント」「高低アクセント」などともいわれます。
(ちなみに、ピッチというのは、人が知覚する音の高さのことです。)
日本語ではピッチアクセントが重要です。
日本語の「NHK日本語発音アクセント新辞典」を見てみると、以下のように表示されています(一部省略した上で抜粋)。
アールヌーボー アールヌ\ーボー
あい【藍】ア\イ
あいがん【愛玩】 アイガン ̄
「\」は、この記号の部分にアクセントの下がり目があり、高いところから低くなるという意味ですね。
「 ̄」は、平板型のアクセントで、最初の拍が低くて、その後は高いまま下がらない(「愛玩」の場合は、「ア」が低くて「イガン」は高い)という意味になります。
いずれにせよ、アクセントは高低で判断しているのがわかると思います。
特に強弱については決まりはありません。
ピッチアクセントの言語
分類法には諸説あるようですが、以下がピッチアクセントの言語としてよくあげられます。
- 日本語、ヘブライ語、ペルシャ語
なお、中国語、タイ語、ベトナム語のような声調のある言語も音の高低が関係はしているので、広義のピッチアクセントとはいえます。
ただ、声調とピッチアクセントは区別することが多いようです(衣畑他 2019, p. 35)。
ストレスアクセントとは
ストレスアクセントとは、音の強弱によるアクセントのことです。
強弱アクセント、強勢アクセント、強さアクセントなどとも呼ばれます。
英語はストレスアクセントです。特に高さについて決まりはありませんが、強弱については決まりがあります。
英語の辞書をみると、発音記号のところに、何らかの形でアクセントを置くところを示していると思います。
例えば、Weblio辞書だと、以下のような発音記号が記されています(一部省略した上で抜粋、赤字追加)。
「í」や「ˈ」の記号はその音節を強く読むということを示していますね。
ストレスアクセントの言語
ストレスアクセントの言語の分け方も諸説ありますが、以下がよくあげられます。
- 英語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語
ご興味のある方は
ピッチアクセントとストレスアクセントについて簡単に紹介しました。
なお、スウェーデン語やセルビア・クロアチア語のように、ピッチアクセントとストレスアクセントの両方を持つ言語もあります。
ちなみに、日本語教育に携わっていると、ピッチアクセント(+ストレスアクセント)について触れる機会が多いです。
学習者に日本語の発音の特徴について説明するときに便利だからというのが理由の一つだと思います。
ご興味のある方は、以下の記事もよろしければご覧ください。
- 「拍」と「音節」の違いについて
- 東京式アクセントについて(平板型・起伏型(頭高型・尾高型・中高型))
- 開音節と閉音節について(英語・日本語の違い)
- アクセント、イントネーション、プロミネンスの違いについてのまとめ
- 直音・拗音・特殊拍(長音・促音・撥音)について
- 音声学とその3つの分野(調音音声学・音響音声学・知覚音声学)について
- 音声学(phonetics)と音韻論(phonology)の違いについて
日本語の音声に興味のある方は以下のような本もあります。
- 松崎 寛・河野 俊之(2018)『日本語教育よくわかる音声』アルク