アップテイクとは
アップテイクとは、「訂正フィードバックを受けた後に学習者が示す何らかの反応」(Lyster and Ranta, 1997)のことを言います。
訂正フィードバックとは、学習者が産出した発話が不自然だと感じた際に、教師などが学習者の発話を繰り返したり、間違いを指摘したりすることで訂正することです。
(訂正フィードバックの種類についてご興味のある方は「言語クラス内でのフィードバックの種類(明示的訂正、リキャスト、明確化要求、メタ言語フィードバック、誘導、繰り返し)について」もご覧ください)
例えば、以下の例を見てください。
学習者:私は大学に日本語を勉強します。
教師:actionが行われた場所のときは「に」じゃなくて「で」を使います。だから「大学で」ですね。
学習者:あ、大学で日本語を勉強します。
最初に「大学に日本語を勉強します」と学習者が言いました。
それに対し、教師が「actionが行われた場所のときは「に」じゃなくて「で」を使います。だから「大学で」ですね。」と訂正フィードバックを行っています。
訂正フィードバックを受けて、「あ、大学で日本語を勉強します」と学習者が言い直しています。
アップテイクは、この訂正フィードバックの後に学習者が示す反応のことで、上記の例の場合は、学習者の「あ、大学で日本語を勉強します」のことを指します。
アップテイクは、学習者が示す何らかの反応のことなので、正しい文言い直すだけでなく、頷いたり、「ああ、そうですか」と短く反応したりすることも含まれます。
学習者のアップテイクは、学習者が教師などの訂正フィードバックに気づいたかどうかを示す重要な手がかりになります。
アップテイクを見て、教師は学習者が理解していないと判断した場合に、さらにフィードバックすることもあります。
なお、訂正フィードバックやアップテイクは、言語教育(教師ー学習者間)の場面だけでなく、インターラクション全般で起こります。
学習言語で話しているときに、友達が自分の言語を直してくれた経験がある人も多いと思います。
インテイクとアップテイク
アップテイクと関連する語に「インテイク(intake)」があります。
インテイク(intake)とは、学習者が見聞きした言語(インプット)のうち、学習者が意識的に気づき、頭に取り込んだもののことです(Schmidt 1990)。
学習者は、学習言語を聞いたり読んだりしますが、すべてを自分のものにするわけではありません。
(特に習い始めた言語だと、その言語に触れたとしても、全然わからないまま聞き流していることは多いと思います)
インテイクとは、聞いたり読んだりしたものの中、自分が注意を向けて、自分で理解して、自分の頭に取り込んだもののことです。
ただ、インテイクはあくまで学習者の中で起こることなので、これを調べることは難しいです。
アップテイクは、学習者の反応のことなので、外から観察することができます。
勿論限界はあるとはいえ、クラスを通しての学習者の習得を示す手がかりにはなることから、フィードバック研究などでアップテイクを観察するものは複数あります(例:Ellis, Basturkmen, Loewen 2008)
ご興味のある方は
ご興味のある方は以下の記事もご覧ください。
- 言語クラス内でのフィードバックの種類(明示的訂正、リキャスト、明確化要求、メタ言語フィードバック、誘導、繰り返し)について
- Schmidt (1990) の気づき仮説(Noticing hypothesis)について
訂正フィードバックにご興味のある方には以下のような本もあります。
- Mackey, A. (2013). Input, interaction and corrective feedback in L2 learning-Oxford Applied Linguistics. Oxford University Press.
- 大関 浩美(編)フィードバック研究への招待 ―第二言語習得とフィードバック. くろしお出版 (2015)