翻訳は異文化間コミュニケーションと似ているとよくいわれます。この考えだと、翻訳者は、原文に忠実な僕ではなく、自らが文化間を仲介する仲介者の役割を果たすと言われています。
さて、今回はタイトルもそのままの「異文化コミュニケーションとしての翻訳」という講演がアップされていたので見てみました。2012年カナダのヨーク大学グレンドンで行われた国際翻訳デーでの講演だそうです。講演者のFiolaはカナダライアソン大学の言語文学文化学部長だそうです。
- Fiola (2012) Translation as Intercultural Communication
この講演で、講演者のFiolaは、文化をあるグループの持つ信念・習慣等(詳しくは忘れましたが。。。)と定義した上で、翻訳者は2つの文化のボーダーにいると言っていました。翻訳者とは、自分の信念等を理解した上で、他文化の声に注意深く耳を傾け、他文化のテキストを注意深く読み解くものだといっていました。
ポスト・コロニアル理論に基づく研究では翻訳者が翻訳を通して時の権力者に加担していたとも言われているので、翻訳者が必ずしも「中立」な立場で仲介するとは言えないと思うのですが、少なくともこの講演では全体的にかなり楽観的な感じで話していました。どちらかというと理想論を言っているような印象も受けました。
- Delisle, Jean, and Marco A. Fiola. La traduction raisonnée, 3e édition: Manuel d’initiation à la traduction professionnelle de l’anglais vers le français. University of Ottawa Press, 2013.