文法訳読法(Grammar-Translation Method)とは
この記事では、文法訳読法(Grammar-Translation Method)の特徴、やり方、メリット、問題点について紹介します。
文法訳読法は、「訳読法」の名の通り、テクストの翻訳を通して言語を学ぶものです。
そもそもラテン語や古典ギリシャ語を教えるときに使われていた教授法です。
ラテン語や古典ギリシャ語は、そもそも日常生活では使う必要がほぼなく、書物の内容を母語に翻訳して理解できれば問題なかったので、クラスでは翻訳が多く取り入れられていました。
この教授法が応用され、19世紀後半~20世紀前半に主にヨーロッパで現代外国語を学ぶ時にも使われるようになりました。
ちなみに、外国語教育における文法訳読法については、Johann Meidinger(1756-1822)やKarl Plotz( 1819-1881)など、ドイツの学者・教育者の影響力が強かったため、アメリカにこの文法訳読法が渡ったとき、当初は「Prussian Method(プロイセン・メソッド)」と言われていたそうです(Siefert 2013)。
文法訳読法は現在も形を変えて、世界各国様々な場所で使われています。
日本の中学・高校の英語教育なども、現在は、コミュニケーション重視の方針が強いようですが、文法訳読法の影響も大きく受けていると思います。
文法訳読法のやり方
よくある文法訳読法のやり方は以下のとおりです(参考:Omaggio Hadley 2001, p. 107)
まず、学生は、読み物の読解に必要な文法規則と語彙を学びます。
教師は文法を、その例外事項なども含めて細かく説明します。語彙は、訳語付きの語彙リストが配られるので、学生はそれを暗記します。
次に、学生は翻訳演習を行います。翻訳は、目標言語から母語、母語から目標言語の双方向で行われます。
文法や読み物の理解度のチェックは、翻訳がうまくできたかで判断されます。
文法訳読法の特徴
文法訳読法の特徴は以下のとおりです。
- クラスでは主に学習者の母語を使う。
- クラスは教師主導型で行われ、学習者間のインターラクションはほとんどない。
- 文法・語彙中心に学ぶ。語彙は語彙リストが配られることが多い。
- 難しいテキストを早い段階から扱う。
- スピーキングやリスニング練習はほとんど行われず、発音にもあまり注意が払われない。
クラスでは基本は学習者の母語を使って行われ、読み物を読むという活動以外に、スピーキングやリスニングの練習には時間が割かれません。
授業は文法・語彙の学習を中心に行われます。
文法訳読法のメリットと問題点
メリット
利点としては、教師側が目標言語の口頭能力がなかったとしても、教えられるということがあげられます。
また、細かいところまで文法規則を学び、翻訳を通して文法・語彙を細かくチェックするので、文法規則の理解は深まると考えられます。
問題点
コミュニケーション能力が身に着かないことが一番の問題点だと言われています。
文法訳読法は、スピーキングやリスニング練習を重視せず、発音にも注意を払いません。
なので、文法訳読法で勉強しても、目標言語で買い物したり、友達と雑談したり、レストランで食事したりと日常の場面で必要な言語能力はなかなか身に着きません。
また、文法の細かい説明を受け、翻訳演習を多くこなすのには忍耐も必要になるので、学習者のモチベーションの維持も難しいと考えられます。
ご興味のある方は
文法訳読法の特徴、メリット、問題点について紹介しました。
文法訳読法はどちらかというと言語教育で敬遠されるきらいがありますが、最近は翻訳を言語教育にうまく使おうとする動きも出ているようです。
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