直接法(Direct Method)の特徴、メリット、問題点について

直接法(Direct Method)とは

この記事では、直接法の特徴、メリット、問題点について紹介します。

直接法(Direct Method)は、19世紀ごろから言語教育に影響を大きな影響を与えた、母語などの媒介語を使わず目標言語のみで授業を行う教授法です。

 

1970年代の教授法では、サイレントウェイはガッテーニョ、サジェストペディアはロザノフなど開発者が明確です。

直接法は、だれかが明確に開発したものというより、媒介語を介在しない授業の総称として使われることも多いです。

なので、以前紹介した、「オーディオリンガル・メソッド」や「ナチュラル・アプローチ」なども、直接法として含められることもあります。

(また、直接法の逆として、媒介語が介在する授業のことを、間接法といったりします。)

 

とはいえ、直接法に影響を与えた人としてよく言語教育関係の入門書で紹介されるのは、フランソワ・グアン(François Gouin)(1831-1896)とチャールズ・ベルリッツ(Charles Berlitz)(1914-2003)です。

特に、直接法の特徴としてよく挙げられるものは、ベルリッツの教授法に基づくものが多いと思います。

 

グアンとベルリッツ

グアンのシリーズ・メソッド

フランス・ノルマンディ生まれのグアンは、自分のドイツ語学習経験から、直接法につながるメソッドを開発します。

彼はドイツ語を学ぶためにハンブルグに住み、文法書を使って文法を学んだのですが、自分の学んだドイツ語は全然使い物にならなかったそうです。

ただ、グアンは、そのときに同じようにドイツにいた3歳の甥が目覚ましい上達をしたのに気づきました。その甥の様子をみて、「シリーズメソッド(Series method)」というものを考えました。

シリーズメソッドは、「シリーズ(series:連続)」という言葉にもあるとおり、教師が連続する動作についてどんどん口に出していくので、学習者もそれを真似しながら覚えるというものです。

例えば、「今、パソコンにタイプをしている、キーボードを打つのをやめた、少し考える、また打ち始める、画面を見つめる」「ドアに近づく、ドアの前で止まる、ドアノブに手をかける、ドアを開ける」などといったように、自分がやっている動作を、教師が口にしていく形です。

 

 

ベルリッツの教授法

ベルリッツはこのグアンのシリーズ・メソッドを応用した教授法を考えました。

ベルリッツの教授法では、言語学習は幼児の第一言語習得をまねた形で行われます。教師は文法を説明しません。多くの例を出すことで、学習者が帰納的に文法を学んでいきます。

また、口頭練習を重視しているのも特徴です。

ベルリッツといえば、語学学校を思い浮かべる人も多いかと思いますが、ベルリッツの創始者は、チャールズ・ベルリッツの祖父にあたるマキシミリアン・ベルリッツだそうです。

 

直接法の特徴

直接法の特徴について、Richards and Rogers (1986, p. 9-10、Brown 2000, p. 45で引用)は以下のように述べています。

  • クラスは目標言語のみで行われる。
  • 日常会話に必要な語彙・文が扱われる。
  • クラスは小規模で、教師主導で主にQ&Aを行う。会話スキルを段階的に伸ばせるようレッスンが組まれている。
  • 文法の説明は行わない。
  • 新しい項目を導入するときは口頭で行う。
  • 具体的な語彙は、実物や写真などを使って導入する。抽象的な語彙は、アイディアを連想することで導入する。
  • スピーキングとリスニングの両方を教える。
  • 正しい発音と文法が強調される。

 

なお、上記の特徴は、ベルリッツの教授法の特徴と言えると思います。

上記にも述べましたが、直接法は、媒介語を使わない教授法の総称としても使われるので、上記の特徴にあてはまらないクラスも多いです。

 

 

直接法のメリットと問題点

メリット

授業がリスニングとスピーキングに重きを置いているので、リスニングとスピーキング能力が育成されやすいと言うことが挙げられます。

母語などの媒介語を使わないので、学習者は目標言語を学習開始直後から聞き、発話することになり、目標言語に慣れるのもはやいと思います。

 

問題点

すべて目標言語で行うので、学習者が理解できない場合のケアが難しいことがあげられます。

特に学習者が初級レベルの場合、学習者が疑問があっても、質問できないことも挙げられます。教師側もどこまで学習者が理解しているのか、把握しづらいともいえます。

また、文法を説明しない分、例文を多く提示しなければならず、教師側の発話が多くなり、学習者の発話が減ってしまうケースもあります。

読み書きはそこまで重視されないので、学習者によってはニーズが合わないと思う人もいるかもしれません。

 

ご興味のある方は

直接法の特徴、メリット、問題点について紹介しました。

 

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