サイレントウェイ(Silent Way)の特徴、やり方、メリット、問題点について

サイレントウェイ(Silent Way)とは

サイレントウェイ(Silent Way)は、カレブ・ガッテーニョ(Caleb Gattegno)が提唱した教授法です。

GattegnoBG.jpg
By ESWI at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0, Link

1970年代に言語教育では様々な教授法が提唱されますが、サイレントウェイも1970年代から盛んになった教授法の一つです。

 

ガッテーニョは、幼児が第一言語を習得するとき、周囲の大人に温かく見守られながら、試行錯誤を繰り返しながら、自ら学んでいくことに着目しました。

サイレントウェイでは、「サイレント」という言葉にもあるとおり、教師は極力発話せず、学習者が試行錯誤を繰り返す状況を作り、学習者が自律的に言語を学べるようにします。

 

サイレントウェイ(Silent Way)の特徴

サイレントウェイの特徴は、学習者主導の教育であることです。学習者が試行錯誤を繰り返しながら、自ら学んでいきます。

 

Stevick (1976)は、サイレントウェイの方針として以下をあげています。

  • 教えることは、学ぶことに従属する。
  • 学習というのは、模倣やドリルではない。
  • 学習は、脳が自ら試行錯誤等を繰り返す中で行われる。
  • 学習は、自分の第一言語の習得経験など、既存のリソースを活用を通して行われる。
  • 教師は学習者の活動を妨げてはいけない。

また、教師が訂正するのではなく、できるだけ学習者自身が訂正できるように促します。また、クラスは全体的に温かい雰囲気で行われます。

 

また、サイレントウェイのもう一つの特徴は、ロッド(rods)という様々な長さの色のついた棒色のついたチャートを使うことです。

↑ロッドはこのような棒です。

ロッドは、主に語彙や動詞、文法を導入するときに使います。

また、カラーチャートも発音を導入するときなどに使います。

 

サイレントウェイのやり方

サイレントウェイでは、まず、教師が、ロッドやカラーチャートを使って、語彙・音声・文法などを導入します。

例えば、発音を導入するときは、このようなカラーチャートを使うことが多いです。

Silent Way English sound-color chart.jpg

By Caleb Gattegno

↑これは英語の音声を色で表しているチャートです(英語以外にも様々な言語でこのチャートがあります)。

ちなみに上半分が母音で、下半分が子音を示しています。

 

教師は何度か音声を発話したあと、後は沈黙し、学習者自身に、それぞれの色がどの音声なのかを考えさせます。

学習者は他の学習者と協力し合いながら、それぞれの色がどの音に対応するのか読み解いていきます。

 

その後、単語の発音の練習もしていきます。

そのときによく使われるのがPronunciation Scienceのウェブページにある、色のついた英単語のチャートです(アクセス日:2021年11月18日)。

それぞれの英単語には、先ほど導入した音声のカラーチャートの色がついていますので、色を手掛かりにそれぞれの英単語をどう発音するかを学習者が自分で発見していきます。

(ちなみに、Pronunciation Scienceのウェブページに日本語教育で使えるサイレントウェイの教材も紹介されています(アクセス日:2021年11月18日)。ご興味のある方はそちらもご覧ください。)

 

サイレントウェイを用いて行った日本語母語話者向けの英語の授業の動画がありましたので、ご興味があればご覧ください。

  • silentway.online (2021) English the Silent Way: A film for language teachers(アクセス日:2021年11月7日)

↑ここでも先ほど紹介したチャートが使われています。

 

ロッドを使った授業の様子は以下の動画で紹介されています。

  • Donald E. Cherry (2010) Silent Way: rods (part 1 of 3) (アクセス日:2021年11月8日)

 

サイレントウェイのメリットと問題点

メリット

学習者が自律的に学べることと、クラス内で他の学習者と積極的にコミュニケーションをとろうとするのがメリットとしてあげられます。

協力的な雰囲気で、不安も少なく学習に取り組めるのもメリットといえるでしょう。

また、自分自身が、自分自身の言語を訂正していく習慣も身に着けることができます。

 

問題点

最初のほうは、クラスのために準備された教材を通常使うので、実際の言語使用になかなか触れられないということが問題点としてあげられると思います。

また、中上級までの教材がそろっていないことが多いので、教師が自分で考えていかなければなりません。

さらに、学習者の中にはすぐに答えがでないことにフラストレーションがたまる人もいると考えられます。

 

ご興味のある方は

サイレントウェイについて簡単に紹介しました。

サイレントウェイも私自身は周りで使っているという人はいませんが、「言語教授法」の授業では紹介されることが多い教授法の一つです。

 

ご興味のある方は他の教授法についてもご覧ください。