サジェストペディア(Suggestopedia)とは
サジェストペディア(Suggestopedia)は、ブルガリアの精神療法士・医師であったゲオルギー・ロザノフ(Georgi Lozanov)が提唱した教授法です。
1970年代に言語教育では様々な教授法が提唱されますが、サジェストペディアも1970年代から盛んになった教授法の一つです。
ロザノフは、Suggestology(日本語では「暗示学」と訳されるようです)と呼ばれる分野での結果をもとに、学習というのは顕在化されているレベルだけでなく、潜在的レベルでも行われていると考えました。
また、潜在意識を刺激することにより、記憶が保持されやすくなるなど、学習効果が大きくなると考えました。
サジェストペディアの特徴
サジェストペディアでは、学習者の潜在意識に働きかけることで、多くの情報を受容・記憶できるようになると考えています。
この潜在意識に働きかけるためには、学習者の緊張をときほぐし、学習者に心身ともにリラックスしてもらう必要性があります。
このため、サジェストペディアは学習者がリラックスできる状態になれる環境づくりを重視しているのが特徴です。
その中でもサジェストペディアの一番の特徴は、クラシック音楽を流しながら、授業を受けることです。
それ以外にも、心地いい椅子を準備する、採光や室温にも気をつける、暖色を使うなど、居心地のよい環境づくりを心掛けています。
サジェストペディアのやり方
サジェストペディアもやり方は多数提案されているようですが、一例を簡単に紹介します。
最初に、会話やスキットなどを通して既習の学習項目を復習します。
その後、新たに学ぶ教材が紹介され、学習者は内容を理解します。教材は、ダイアローグやスキットの形が多いです。
その次がサジェストペディアの特徴である、「コンサート」が行われます。このコンサートを通して、潜在意識のレベルで新しい教材を定着させようとします。
「コンサート」はアクティブ・コンサートとパッシブ・コンサートに分かれます。
アクティブ・コンサートでは、教師がクラシック音楽に合わせて、教材を読み上げます。教師は読むときに音量や声色を変えたりと工夫もします。
学習者は、教材を目で追いながら、心の中で教材を繰り返し、内容を理解します。
パッシブコンサートでは、バロック音楽に合わせて、教師は教材を読み上げます。
バロック音楽を聞くのは、脳はがアルファー波になりやすいからといわれています。この状態のときに、潜在意識が刺激され、学習効果が上がると考えられています。
パッシブコンサートでは、学習者は教材を目で追う必要はありません。目を閉じて、リラックスした気分で、教師の朗読を聞きます。
このコンサートの動画がYouTubeにアップロードされていましたので、ご興味があればご覧ください。
- Kaz Hagiwara (2010) Suggestopedia Japanese Concert Session (1st).mp4 (アクセス日:2021年11月6日)
コンサートの後に、ロールプレイなどの、会話練習を行ったりするケースもあるようです。
サジェストペディアのメリットと問題点
メリット
サジェストペディアのメリットは、心地よい環境で、不安や緊張なく学習者が学べるということにあると思います。
また、教材は、ある場面でのダイアローグ・スキットという形で提示されることが多く、文脈の中で言語がどう使われるかを学ぶこともできます。
問題点
まず、最初に、学習者がリラックスできる環境づくりをするのが大変ということが挙げられると思います。
採光・室温もよく、心地のいい椅子があるといったような教室環境を整えるのは容易ではありません。
教師の朗読能力も求められます。
また、潜在意識に働きかけることにどこまで学習効果があるのかが明らかではないなど、この教授法の前提となるSuggestology(暗示学)そのものが批判されることもあります(Scovel 1979)。
ご興味のある方は
サジェストペディアについて簡単に紹介しました。
サジェストペディアを使っているという人は私の周りにはいませんが、「言語教授法」の授業では紹介されることが多い教授法の一つです。
ご興味のある方は他の教授法についてもご覧ください。
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