日本語の自動詞と他動詞の違いについて

日本語の動詞は「子音語幹動詞・母音語幹動詞」、「自動詞・他動詞」、「意志動詞・無意志動詞」、「状態動詞・動態動詞」、「本動詞・補助動詞」、「能動詞・所動詞」など、様々な分け方がされます。

(詳しくは「日本語の動詞の分類について」もご覧ください)

この記事では「自動詞と他動詞」について説明します。

 

自動詞(intransitive verbs)と他動詞(transitive verbs)の違い

自動詞と他動詞は、それぞれの動詞がヲ格の目的語をとるかとらないかによって分けるやり方です(松岡他 2000, p. 96)

  • 自動詞:ヲ格の目的語をとらない動詞
  • 他動詞:ヲ格の目的語をとる動詞

 

例えば、以下の2文を見てください。

妹は泣いた。

妹はご飯食べた。

 

上の「泣いた」の場合は、「ご飯を」のような、ヲ格の目的語をとることができません。

「妹はニュースを泣いた」「妹は夜を泣いた」などいうのは変ですね。

「泣く」「開(あ)く」「泳ぐ」「壊れる」「止まる」のように、ヲ格の目的語をとらない動詞を自動詞といいます。

 

「食べる」「飲む」「開ける」「壊す」は、ヲ格の目的語をとることができます。

「ご飯を食べる」「コーヒーを飲む」「ドアを開ける」のように言えますね。

このヲ格の目的語をとる動詞を他動詞といいます。

 

意志的自動詞と非意志的自動詞

自動詞は意志的自動詞と非意志的自動詞に分けられます(松岡 2000, p. 96)

意志的自動詞

意志的自動詞は、人間などの意志が含まれる動詞です。(「意志」について詳しく知りたい方は「意志動詞と無意志動詞の違いについて」もご覧ください。)

意志的自動詞には、以下のような例があります。

走る、泳ぐ、起きる、寝る、笑う

これらの動詞は、人の意志でコントロールできるもの(一般的に自分の意志で始め、やめることができる)と考えられるので、意志的自動詞となります。

 

非意志的自動詞

非意志的自動詞は、人間などの意志は含まれていない動詞です。自然に物事が起こったというニュアンスがあります。

 

非意志的自動詞には、以下のような例があります。

割れる、壊れる、開(あ)く、閉まる、止まる

 

自他の対応

自他の対応

非意志的自動詞の一部は、他動詞のペアを持つものがあります。このペアについて「自他の対応」があるといいます。

自他の対応がある動詞は以下のようなものがあります。

  • あく(自動詞)      ⇔ あける(他動詞)
  • 閉まる(自動詞)  ⇔  閉める(他動詞)
  • 壊れる(自動詞)  ⇔ 壊す(他動詞)
  • つく(自動詞)   ⇔ つける(他動詞)

 

自他の対応のあるときは、以下のように使い分けられます(石黒・筒井 2009, p. 26)

  • 自動詞:そのこと(=X)が自然に起こったといいたいとき。「Xは/が 自動詞」
  • 他動詞:誰か(=Y)の意志でそのこと(=X)を引き起こしたと言いたいとき。「Yは/が X を 他動詞」

 

「(ドアが)開(あ)く」「(ドアが)閉まる」「(パソコンが)壊れる」「(電気が)つく」というと、そこに人の意志が介在せず、自然にこれが起こったというような表現になりますね。

「(私はドアを)開ける」「(私がドアを)閉める」「(私がパソコンを)壊す」「(私が電気を)つける」というと、誰かがそれを引き起こしたというニュアンスが含まれます。

 

赤川次郎の「三毛猫ホームズのびっくり箱 」では、この自他の対応をうまく使った例が出てきます。

石津刑事が木の枠を引っ張ったときに、その枠が裂けてしまったときがありました。そのときに石津刑事は「壊したんじゃありません。向こう(=木の枠)が壊れたんです。」(p. 192)と言い訳しています。

「壊れる」という自動詞を使うことで、「木の枠が裂けた」という現象が、自然に生じたのだといっています。

自他の対応をうまく使った例ですね。

 

自動詞・他動詞の区別

日本語学習者にとって、自他の対応を覚えるはとても大変です。というのも、対応が規則的ではなく、様々なパターンがあるからです。

「あく(自動詞)、あける(他動詞)」「しめる(自動詞)、しまる(他動詞)」など、いちいち覚えなければいけません。

形も似ているので、どちらが自動詞でどちらが他動詞かも混乱しやすく、上級学習者でも誤用が見られます。

また、自他のペアがない動詞もあるので、自他の区別がある動詞と、自動詞又は他動詞しかない動詞を区別していくのも大変です。

ただ、以下のような一般規則はあります(石黒・筒井 2009, p. 24)

①―aruで終わるものはすべて自動詞。ーeruに変えると他動詞になる。

以下のような例があります。

  • 上がる(agaru)(自動詞)      ⇔ 上げる(ageru)(他動詞)
  • 終わる(owaru)(自動詞)     ⇔  終える(oeru)(他動詞)
  • 高まる(takamaru)(自動詞)⇔ 高める(takameru)(他動詞)

 

②ーreruで終わるものはすべて自動詞。他動詞はーsuかーruになる。

以下のような例があります。

  • 壊れる(kowareru)(自動詞) ⇔ 壊す(kowasu)(他動詞)
  •  流れる(nagareru)(自動詞)⇔ 流す(nagasu)(他動詞)

 

③ーsuで終わるものはすべて他動詞。

以下のような例があります。

  • 起こす(okosu)(他動詞)
  • 落とす(otosu)(他動詞)
  • 移す(utsusu)(他動詞)

 

ご興味のある方は

自動詞と他動詞の区別について簡単に紹介しました。何かのお役に立てれば幸いです。

 

もっと興味のある方は、自動詞・他動詞については上記のような本も出版されています。

 

もしご興味のある方は以下の記事もご覧ください。