子音語幹動詞・母音語幹動詞(五段活用動詞・一段活用動詞、u-verbs・ru-verbs、Group I verbs・Group II verbs)の違いについて

日本語の動詞は「子音語幹動詞・母音語幹動詞」、「自動詞・他動詞」、「意志動詞・無意志動詞」、「状態動詞・動態動詞」、「本動詞・補助動詞」、「能動詞・所動詞」など、様々な分け方がされます。

(詳しくは「日本語の動詞の分類について」もご覧ください)

この記事ではこの中の「子音語幹動詞・母音語幹動詞」について説明します。

 

子音語幹動詞・母音語幹動詞について

子音語幹動詞・母音語幹動詞というのは、日本語の動詞を活用の観点から分類したものです。

「意志動詞・無意志動詞」は分類の判断がつきにくいものも結構ありましたが、子音語幹動詞・母音語幹動詞は基本は簡単に分類できます。

 

  • 子音語幹動詞
    • 語幹が子音で終わる動詞。子音動詞とも呼ばれる。
    • 国語教育では五段活用動詞と呼ばれる。
    • 日本語教育ではu-verbs、Group I verbs、グループ 1などと呼ばれる。

 

  • 母音語幹動詞
    • 語幹が母音で終わる動詞。母音動詞とも呼ばれる。
    • 国語教育では一段活用動詞(上一段活用動詞・下一段活用動詞)と呼ばれる。
    • 日本語教育ではru-verbs、Group II verbs、グループ2などと呼ばれる。

 

日本語の動詞は、その活用に基づき、子音語幹動詞、母音語幹動詞、そして不規則動詞の3つに分けられます。

ちなみに、不規則動詞は「する」と「くる」のみです。

 

子音語幹動詞とは

「語幹」というのは、「活用しない部分」のことを言います

 

その語幹が子音で終わるものが子音語幹動詞です。単に子音動詞とも呼ばれます。

例えば、「話す」という動詞の場合、活用させると以下のようになります。

  • 話さない(hanas-anai)
  • 話した(hanas-ita)
  • 話す(hanas-u)
  • 話せ(hanas-e)
  • 話そう(hanas-oo)

 

「話す」の場合、いろいろ活用しても、赤字で示した「hanas」は変化していません。

この「hanas」は「活用しない部分」、つまり語幹になります。

 

「話す」の場合、語幹である「hanas」の最後は「s」と子音で終わっているので、子音語幹動詞になります。

 

母音語幹動詞とは

語幹が母音で終わるものが母音語幹動詞です。単に母音動詞とも呼ばれます。

例えば、「教える」という動詞の場合、活用させると以下のようになります。

  • 教えない(oshie-nai)
  • 教えた(oshie-ta)
  • 教える(oshie-ru)
  • 教えろ(oshie-ro
  • 教えよう(oshie-yoo)

 

「教える」の場合、赤字で示した「oshie」が活用しない部分で、語幹になります。

oshie」の最後は「e」と母音と終わっていますので、母音語幹動詞になります。

子音語幹動詞・母音語幹動詞の様々な言い方

子音語幹動詞・母音語幹動詞は、国語教育・日本語教育で呼び方が違います。同じ活用に基づく分類なのですが、着目点が違いますね。

国語教育の場合

子音語幹動詞・母音語幹動詞は、国語教育では五段活用動詞・一段活用動詞(上一段+下一段)と言われます。

これは、語幹ではなく、日本語の五十音図に基づく活用語尾に注目した分け方ですね。

 

子音語幹動詞は、五段活用動詞のことですが、活用語尾が五十音図の五段にわたって変化します。

上記にも挙げた「話す」という子音語幹動詞(五段活用動詞)ですが、次のように活用します。

  • ない(hanas-anai)
  • た(hanas-ita)
  • hanas-u)
  • hanas-e)
  • う(hanas-oo)

 

青字の部分に注目してほしいのですが、活用するときに「さ、し、す、せ、そ」と日本語の5つの段をすべて使っています。

 

母音語幹動詞は、一段活用動詞(上一段活用動詞と下一段活用動詞)のことです。

上記にも挙げた「教える」という母音語幹動詞(下一段活用動詞)の場合、活用させると以下のようになります。

  • ない(oshie-nai)
  • た(oshie-ta)
  • る(oshie-ru)
  • ろ(oshie-ro
  • よう(oshie-yoo)

青字の部分の着目すると、全部「え」で、活用するときに「え」という一段しか使っていないですね。

 

国語教育での分類法は、語幹(赤い部分)に着目するのではなく、活用語尾(青い部分)に注目した分類の仕方です。

 

日本語教育の場合

日本語が母語でない人を主な対象とした日本語教育では、子音語幹動詞のことはu-verbsやGroup I verbs、グループ1などと呼ばれます。

母音語幹動詞のことは、ru-verbsやGroup II verbs、グループ2などと呼ばれます。

 

基本は、語幹に着目した分け方という点では変わらないのですが、教科書によって呼び方が違います(日本語教育でよく使われる初級教科書についてはこちらの記事もご覧ください)。

 

有名な初級教科書である「初級日本語げんき」は、子音語幹動詞のことを「u-verbs」と言います。

これは辞書形という辞書に載っている形の活用語尾に着目したものです。

「話す」の場合、辞書形は「話す」ですね。

  • ない(hanas-anai)
  • た(hanas-ita)
  • hanasu
  • hanas-e)
  • う(hanas-oo)

水色の部分に注目してほしいのですが、辞書形の「話す」の活用語尾は「u」ですね。

u-verbsは、この水色部分に着目して名付けられています。

 

また、「初級日本語げんき」は母音語幹動詞のことを「ru-verbs」と言いますが、これも同じ理由からです。

先ほども見た「教える」の場合、辞書形は「教える」ですね。

  • ない(oshie-nai)
  • た(oshie-ta)
  • る(oshieru
  • ろ(oshie-ro
  • よう(oshie-yoo)

水色の部分の着目すると、「ru」になっています。

 

また、有名な初級教科書である「みんなの日本語」では、単に子音語幹動詞をGroup I verbs、母音語幹動詞をGroup II verbsと分けています。

国際交流基金の開発した「まるごと 日本のことばと文化」では、子音語幹動詞をグループ1、母音語幹動詞をグループ2と言っています。

 

このように単にグループ1、グループ2で分ける教科書も多いです。

 

まとめ&ご興味のある方は

子音語幹動詞・母音語幹動詞(五段活用動詞・一段活用動詞、u-verbs・ru-verbs、Group I verbs・Group II verbs)の違いについてについて説明しました。

すべて活用を基にした分類という点では同じなのですが、名称が違うのは、着目するポイントが違うからと言えると思います。

 

また、日本語教育に携わっていない方でご興味のある方は、初級の日本語教科書を見てみると、日本語を別の視点からみられて面白いのではないかと思います。

(文法の説明の仕方など、目からうろこです。)

  • GENKI: An Integrated Course in Elementary Japanese I [Third Edition] 初級日本語げんき[第3版]

↑今回の記事でも紹介した初級総合教科書「げんき」です。文法説明は英語で比較的簡潔に記載されています。

一冊で文法説明や練習が入っているので、お薦めです。(他の初級教科書は、文法説明と本冊で別々の本に分かれていることが多いです。)

 

また、国際交流基金が最近発表した『いろどり 生活の日本語』という、日本で生活する日本語学習者向けの教科書は、無料ですべてのコンテンツにアクセスできます。

 

日本語の動詞の分類にご興味のある方は以下の記事もご覧ください。