日本語の動詞は「子音語幹動詞・母音語幹動詞」、「自動詞・他動詞」、「意志動詞・無意志動詞」、「状態動詞・動態動詞」、「本動詞・補助動詞」、「能動詞・所動詞」など、様々な分け方がされます。
(詳しくは「日本語の動詞の分類について」もご覧ください)
この記事ではこの中の「意志動詞・無意志動詞」について説明します。
意志動詞と無意志動詞
意志動詞と無意志動詞は、以下のように区別されます。
- 意志動詞:人(主体)の意志でコントロールできるもの
- 無意志動詞:人(主体)の意志でコントロールできないもの
ただ、一体何がコントロールできるもので、できないものなのか、判断に迷うものも多いです。
意志動詞
意志動詞は、人(主体)が意志によってコントロールできるものです。
以下のような例があります。
- 書く、聞く、読む、歩く、運転する、走る、飛ぶ、割る、叫ぶ、笑う、働く、泣く
人の意志で動作を実行するというイメ―ジです。自分がしたいと思えばはじめ、やめたいと思えばやめることができます。
(とはいえ、「なぜ『泣く』が意志動詞なんだ?涙がでるのは意志でコントロールできない」と言われることもあり、なかなか難しいです。)
また、ややこしいポイントでもあるのですが、意志動詞が活用して、「書ける」と可能形になったり、「書かれる」と受身形になった場合は、意志動詞とはみなされなくなります。
その理由として、可能形の「書ける」や受身形の「書かれる」というのは、「状態」に近くなり、意志性が失われるからだと言われたりします(近藤・小森 2012 p. 182)。
無意志動詞
無意志動詞は、人(主体)の意志でコントロールできないものです。
以下のような例があります。
- (パソコンが)ある
- (コップが)割れる
- (洗濯物が)乾く
- (ドアが)開(あ)く
- (雨が)降る
- (風が)吹く
- (話が)続く
「ある」のような状態を表す動詞や、「コップが割れる」、「洗濯物が乾く」「雨が降る」など、主語に意志を持つ主体をとらない動詞ですね。
これらの動詞は、人が意志でコントロールできるものではないとみなされます。
無意志動詞は、(人の意志ではなく)結果としてその動作が生じるという意味を持つものが多いです。
ちなみに、自動詞は無意志動詞のことが多いですが、全部ではありません。例えば「起きる」「泳ぐ」「泣く」などの動詞は自動詞ですが、意志動詞です。
また、感情・心因的なものも無意志動詞に含めることが多いです(ただ、どこまで含めるかは意見も分かれます)。
- (泣いてばかりいる子どもに)困る
- 悲しむ
文脈によって変わるケース
動詞によっては、一つの動詞が意志動詞・無意志動詞の両方で使われるものもあるので、文脈で判断することになります。
例えば「忘れる」の場合だと、以下のようになります。
- 別れた彼女のことは早く忘れよう。→意志動詞
- 昨日、うっかりして宿題を忘れてしまった。→無意志動詞
なぜこの区別が必要か
なぜ意志動詞と無意志動詞の区別が必要かというと、文法上の制約にかかわるからです。
日本語では、命令・禁止・勧誘・依頼・希望・可能などを示す文型のときに無意志動詞を使えない(使いづらい)ことが多いです。
例えば、以下のような文型で、無意志動詞は使いづらいです。
- ~なさい(命令)
- ~てはいけない(禁止)
- ~よう(勧誘)
- ~てください(依頼)
- ~たいです(希望)
- ~ことができる(可能)
上記の文型で、無意志動詞が使いづらいというのを「(話が)続く」という無意志動詞を例に考えてみます。
- ?このまま話が続きなさい!
- ?もうすぐ授業が始まるので、話が続いてはいけない。
- ?もっといろいろ話したいから、話が続こう!
- ?もっといろいろ話したいから、話が続いてください。
- ?これからも話が続きたいです。
- ?話が続くことができます。
不自然に聞こえるものが多いのではないでしょうか?
意志動詞と無意志動詞の見分け方
意志動詞と無意志動詞を見分けるときは、先ほど言った以下のような文型にあてはめてみて、問題なく使えるかを試してみるといいと思います。
- ~なさい(命令)
- ~てはいけない(禁止)
- ~よう(勧誘)
- ~てください(依頼)
- ~たいです(希望)
- ~ことができる(可能)
とはいえ、繰り返しになりますが、すべての動詞が明確に分けられるかというと、そういうわけではなく、判断がつきづらいものも多いです。
ご興味のある方は
意志動詞・無意志動詞の区別について簡単に紹介しました。
きっちり分けられないものも多いのですが、日本語では意志性が大切になる文法が多いので、意志動詞・無意志動詞の区別を知っておくと便利だと思います。
ご興味のある方は以下の記事もご覧ください。