この記事では、メタ言語とパラ言語の違いについて紹介します。
メタ言語とパラ言語
メタ言語とパラ言語は、ことばが似ているのでややこしいのですが、意味は全然違います。
メタ言語:言語について説明・記述するときに使う言語のこと
パラ言語:イントネーション、声の速さ、ポーズや声量など、言語以外で伝わる音声情報のこと
以下、詳しく説明します。
メタ言語
メタ言語の「meta」という接頭辞は、 「超越」「高次」「抽象度を高めた」という意味があります。
メタ言語というのは、言語そのものについて説明・記述するときに使う言語のことです。普段使っている言語を、一段上から眺めて、分析・記述するイメージでしょうか。
簡単にいってしまうと、「〇〇語を話す」のではなく、「〇〇語という言語について話す」ことがメタ言語になります。
例えば、「日本語は敬語がある」、「日本語の数詞は複雑だ」など、日本語という言語について話している場合は、メタ言語になります。
ちなみに、メタ言語は、最初はロマーン・ヤコブソンよって使われた用語のようです。
例えば、以下のような言語について記述しているものは、基本、すべてメタ言語になります。
- 英語は3単元のsがある
- 英語はaとtheという冠詞があるが、日本語にはその区別がない
- 「He is a student」のときの「he」は主語だ。
- 英語は日本語のような複雑な言語形式としての敬語は存在しない。
「動詞」「名詞」「形容詞」などの文法用語もメタ言語になります。
言語を学習するときに、文法を学ぶと思いますが、文法もメタ言語と考えていいと思います。
パラ言語
パラ言語とは、イントネーション、声の速さ、ポーズや声量など、言語以外で伝わる音声情報のことです。
「para」という接頭辞は、「~の近くに」「~を超えた」「補助的な・副次的な」というような意味があります。
人がコミュニケ―ションをするとき、話している内容(文字化できるもの)以外にも、声の速さや声質、イントネーションなど、様々な言語化できない音声情報が含まれます。
例えば、「元気ですか」という発話をした場合も、「元気ですか?」と文末をあげて発話するか、「元気ですか。」と文末を下げて発音するかで、印象は随分変わります。
また、「元気ですか」をすごく速く言う場合とゆっくり言う場合、ポーズを入れる場合などでもずいぶん印象はかわります。
パラ言語とは、音声で伝わる情報のうち、言語以外の部分のことを指すことが多いです。
パラ言語の範囲
ただ、何をパラ言語に含めるかは結構ばらつきがあるようです。
パラ言語という用語はTrager (1958) まで遡ることができるそうですが、Tragerは、パラ言語を、音声言語を構成する非言語的手がかりという風に書いて、あまり厳密には分析していなかったようです(森 2012)。
その後、議論が発展する中で、色々な定義がでてきたのではと思います。
日本語教育・日本語学の参考書を見てみても、定義は若干ちがっているようです。
例えば、近藤・小森 (2012, p. 36)では、音声で伝わる情報を、言語情報・パラ言語情報と非言語情報の3つにわけて説明し、パラ言語・非言語を分けて考えています。
そして、パラ言語情報は、言語以外の音声情報で、かつ、話者が意識的にコントロールできるものとしています(近藤・小森 2012, p. 36)。
イントネーションやポーズ、リズムなどはパラ言語情報ですね。
話者が意識的にコントロールできない、音声によって伝わる話者の性別やおおよその年齢、体や心の調子(起きたばかり、風邪をひいているなど)は声質に現れる非言語情報としています。
一方、衣畑他 (2019, p. 177)では、イントネーション、話すスピード、リズム、ポーズ、声の大きさの他、声質もパラ言語情報に入れています。
そして、非言語情報として話し手の表情や視線、身振りや姿勢、その人物の身体、服装等を入れていました。
まとめ
メタ言語とパラ言語について説明しました。
全然違うんですが、混乱しやすい用語だと思います。何かのお役に立てると幸いです。