連濁とは、単語と単語が合体するときに、後ろの語の語頭が濁音に変わることをいいます。
例えば、「鼻(はな)」と「声(こえ)」が合わさると「鼻声(はなごえ)」になりますね。
後ろの語「声(こえ)」の語頭「こ」が「ご」に濁音化しています。
この記事では、この連濁の原則と、例外について紹介します。
連濁の基本ルール
連濁には以下のようなルールがあります。
- 和語が合わさる場合、原則として連濁する。
- 漢語・外来語が合わさる場合、原則として連濁しない。
日本の語彙は、和語・漢語・外来語・混種語にわけられます(詳しくは「語種(和語・漢語・外来語・混種語)について」もご覧ください。)。
このうち、和語が合わさるときは連濁する、漢語や外来語が合わさる場合は連濁しないという原則があります。
とはいえ、あくまで「原則」であって、例外も多いです。
① 和語が合わさると原則は連濁する
以下のように、和語が合わさるときは連濁します。
- 鼻(はな)+ 声(こえ) → 鼻声(はなごえ)
- 青(あお)+ 空(そら) → 青空(あおぞら)
- 花(はな)+ 火(ひ) → 花火(はなび)
「声(こえ)」「空(そら)」「火(ひ)」は、日本にもともとあった語、つまり和語ですね。
和語が合わさる場合は連濁して、それぞれ「鼻声(はなごえ)」「青空(あおぞら)」「花火(はなび)」となります。
ちなみに、連濁する理由は、無声音である子音が、有声音である母音に囲まれたことにより、有声音化するからといわれています。
(有声音・無声音については「有声音・無声音・有気音・無気音の違いについて」もご覧ください。)
つまり、「鼻声(はなごえ)」の場合は以下のようになります。
hana + koe → hanagoe
「声」の語頭の「k」は無声音ですが、「a」と「o」という有声音に囲まれたことにより、母音につられて有声音化して「g」の音になったということです。
② 漢語・外来語が合わさると、原則として連濁しない
ただ、以下のように、漢語・外来語が合わさる場合は原則として連濁しません。
- 最高(さいこう)+ 記録(きろく) → 最高記録(さいこうきろく)
- 提出(ていしゅつ)+ 書類(しょるい) → 提出書類(ていしゅつしょるい)
- コンサート + ホール → コンサートホール
「記録」「書類」は漢語ですが、漢語が合わさる場合は、連濁は起こりません。
つまり、「さいこうぎろく」や「ていしゅつじょるい」にはなりません。
また、外来語の場合も同じで、「ホール」が「コンサートボール」にはなりません。
連濁の例外
とはいえ、連濁には例外もたくさんあります。また、例外の例外まであって、奥が深いです。
(詳しく知りたい方はバンス他(編)(2017)『連濁の研究: 国立国語研究所プロジェクト論文選集』開拓社 などをご参照ください。)
主な例外ルールとして、
- 和語なのに連濁しない場合
- 漢語・外来語なのに連濁する場合
の2つに分けて説明します。
① 和語なのに連濁しない場合
和語なのに連濁しない場合として以下があります。
① 和語でも、並列構造の場合は連濁しないことが多い。
- 好き(すき) + 嫌い(きらい) → 好き嫌い(すききらい)
- 山(やま) + 川(かわ) → 山川(やまかわ)
- 飲み(のみ) + 食い(くい) → 飲み食い(のみくい)
まず、「好き嫌い」「山川」のように、並列構造の場合(つまり、2つの語の関係が対等なもので、主述関係・修飾・被修飾関係など文法的関係がみられないもの)は連濁しないことが多いです。
② 和語でも、後ろの語に濁音がある場合は連濁しないことが多い。
- 春(はる)+風(かぜ) → 春風(はるかぜ)
- 合(あい)+鍵(かぎ) → 合鍵(あいかぎ)
- 通学(つうがく)+ かばん → 通学かばん(つうがくかばん)
また、後ろの語に濁音が既に存在している場合も連濁しないことが多いです。
(明治時代に日本に来日したベンジャミン・スミス・ライマンが提唱したことで、ライマンの法則ともいわれています。)
例えば、「春風」の「風」には「かぜ」、「合鍵」の「鍵」には「かぎ」、「通学かばん」の「かばん」には「かばん」と既に濁音が含まれています。
この場合、「はるがぜ」「あいがぎ」「がばん」にはならず、「はるかぜ」「あいかぎ」「かばん」となります。
② 漢語・外来語なのに連濁する場合
以下のような場合、漢語・外来語なのに連濁することもあります。
- 単行(たんこう) + 本(ほん) → 単行本(たんこうぼん)
- 株式(かぶしき) + 会社(かいしゃ)→株式会社(かぶしきがいしゃ)
- 準備(じゅんび)+ 不足(ふそく) →準備不足(じゅんびぶそく)
- 歌(うた)+ かるた → 歌がるた
説明としては、「漢語も、元々外来語であったことが忘れられるほど定着すると、連濁することがある」(橋本 2016)などと言われることがよくあります。
ただ、何をもって「定着した」とみなすかは微妙なところだと思います。
ちなみに、「かるた」はもともとはポルトガル語由来の外来語です。
まとめ
連濁のルールについて簡単に説明しました。まとめると、以下のような基本ルールがあります。
- 2つの和語が合わさる場合、原則として連濁する。
- 2つの漢語・外来語が合わさる場合、原則として連濁しない。
何かのお役に立てれば幸いです。
また、日本語には連濁以外にも様々な変音現象があります。これについて興味のある方は、よろしければ以下の記事もご覧ください。