「だけ」と「ばかり」の違いについて

「だけ」と「ばかり」

「だけ」と「ばかり」は以下のように似たような意味で使われます。

 

  • 他にも人はいるのに、なぜかAさんばかり事を押し付ける。
  • 他にも人はいるのに、なぜかAさんだけ仕事を押し付ける。

 

この記事では「だけ」と「ばかり」の違いについて説明します。

*今回は名詞+ばかり、名詞+だけ のケースで説明します。

 

違い①:「ばかり」はXが多いことを示す

違いとしては以下があげられます。

「Xばかり」はXが「多い」ことを表す

「Xだけ」はX以外のものが存在しない

松岡他, 2000, p. 249)

 

「Xばかり」は量や回数などが多いという話しての気持ちを表すとりたて助詞松岡他, 2000, p. 249)です。

とりたて助詞は、話し手の気持ちを表すもので、客観的に「多い」というより、話し手が「多い」と思っているというニュアンスです。

(詳しくは「とりたて助詞とは?格助詞との違いについて」もご覧ください)

 

「Xだけ」はそれ以外しかないという意味になります。

 

「Xだけ」を使い、「Xばかり」が不適切な例

以下の場合は、「Xだけ」を使うべきで、「Xばかり」を使うと不自然です。

〇 パンだけを買ってきてください。

✕ パンばかりを買ってきてください。

 

「パンだけを買ってきてください」というと、「パン以外は買ってこないでほしい」という意味になります。

 

「パンばかりを買ってきてください」というのは、不自然です。

あえて解釈すると、「(話し手が多いと思う量の)パンを買ってきてください」というような意味になるかもしれませんが、不自然ですね。

 

Aさんが買い物に行ったときに、他のものはほとんど買わず、パンをたくさん買ってきたとします。

Aさんの買い物袋にたくさんパンが入っているのをみたBさんが「え?パンばかりだね!(=その人がパンが多いと思っている)」ということはできます。

 

「Xばかり」を使い、「Xだけ」が不適切な例

以下の場合は、「Xばかり」を使うほうが自然です。

✕ ここ一か月、雨だけ降っている。

〇 ここ一か月、雨ばかり降っている。

 

「雨だけ降っている」というと、「この1か月、雨以外は降っていない」という意味になってしまい、ずいぶんな異常気象になってしまいます。

「雨ばかり降っている」というと、「この1か月、雨が降ることが多いと話し手が思っている」という意味で、適切です。

 

違い②:「ばかり」は不満を言うときに使われやすい

「Xばかり」は不満や文句をいうときによく使われます(もちろんプラスの意味で使われることもあります)

「Xばかり」は、話し手が「多い」と感じているということでしたが、「多すぎる」という意味で使われやすいのかもしれません。

 

例えば以下のような例があります。

  • スマホばかりしていないで、もう少し有意義なことをしなさい。
  • お酒ばかり飲んでいたら、体に悪いよ。
  • 文句ばかり言っていても、何も始まらない。

 

まとめ

「Xだけ」と「Xばかり」の違いについて簡単に説明しました。違いとして以下の2点をあげました。

①【意味の違い】
「Xばかり」はXが「多い」ことを表す。「Xだけ」はX以外のものが存在しないということを表す。

②【使い方】
「Xばかり」は不満・文句のときに使いやすい

 

もう少し詳しく知りたい方は、以下の本に詳しいです(他のとりたて助詞の違いなども説明されています。)

 

  • 松岡他(2000)「初級を教える人のための日本語文法ハンドブック」スリーエーネットワーク