格助詞とは?
「とりたて助詞」について説明する前に、格助詞について説明します。
格助詞は文法関係を示す助詞です。日本語は膠着語で助詞を使って文法関係を示します。
例えば以下の文を見てください。
- 8時田中さんレストラン山田さんパスタ食べた。
文を助詞を使わずにいったら意味がわかりません。
- 8時に田中さんがレストランで山田さんとパスタを食べた。
上記の文のように、動作が起こる時点を示す「に」、動作の主体を表す「が」等、文法関係を示す助詞、すなわち格助詞があるからこそ、文の意味がわかります。
格助詞には以下のようなものがあります。
とりたて助詞とは?
さて、本題のとりたて助詞です。
とりたて助詞は、文法関係でなく、「文中の要素についてその要素やその要素が表す出来事などに対する話し手の気持ちを暗示する」助詞のことです(庵 2001, p. 183)。
とりたて助詞は、格助詞と違い、なかったとしても文は成り立ち、以下3つの特徴があります。
- 話し手の気持ちを暗示
- 文中の様々なところに現れる
- 名詞以外の品詞にもつくことがある
なお、とりたて助詞は、国語文法の副助詞や係助詞に当たるものです。
特徴①:話し手の気持ちを暗示
とりたて助詞は、話し手の気持ちを暗示します。
以下の文を見てください。
- 会社に行った。
- 会社にも行った。
「も」は付加を表す助詞です。
「も」を使った場合、あえていわなかったとしても、聞き手は話し手が「会社以外のどこかにも行った」ということがわかります。
つまり、「会社に行った」以外に、「会社以外にもいった」という言外の意味が暗示されています。
「さえ」というのは意外を表すとりたて助詞です。
- 山田さんさえこの問題が解けなかった。
このときは、話し手が「山田さんがこの問題を解けなかったこと」が「意外」と思っていることが暗示されます。
このように何か言外の意味が暗示されるのがとりたて助詞の特徴です。
特徴②:文中の様々なところに現れる
とりたて助詞は、格助詞のように文法関係を表すものでないため、以下のように文中の様々な場所つけることが可能です。
つまり、様々な名詞(句)を取り立てることができます。
- 私が思った → 私も(×がも)思った。
- ご飯を食べた → ご飯も(△をも)食べた。
- 大学に行った → 大学にもいった。
- 友達と食べた → 友達とも食べた。
なお、格助詞「が」や「を」はとりたて助詞がついた場合、「私も(×私がも)」のように省略されることが多いです。
それ以外の助詞は、省略してしまうと文法関係がわからないため、「大学にも」「友達とも」のように省略されません。
「は」もとりたて助詞です。
「主語の格助詞では?」と思った方もいるかもしれませんが、「は」は文の主題・対比のとりたて助詞となり、文中の様々なところにつけられます。
- 私が思った → 私は(×がは)思った。
- ご飯を食べた → ご飯は(△をは)食べた。
- 大学に行った → 大学にはいった。
- 友達と食べた → 友達とは食べた。
③名詞以外の品詞にもつくことがある
格助詞は名詞について文法関係を示しますが、とりたて助詞は、名詞以外の品詞にもつくことがあります。
赤字がとりたて助詞です。
- ネコはかわいいだけでなく、頭もいい(かわいい:形容詞)
- 彼は本を読んでばかりいる(読んで:動詞)
- ゆっくりなんてできない(ゆっくり:副詞)
とりたて助詞の種類
とりたて助詞の種類としては以下のようなものがあります。カッコ内は主な意味です。
- は(主題、対比)
- も(並立・付加)
- だけ、ばかり、しか(限定)
- なら(主題)
- こそ(際立ち)
- のみ、だけ(限定)
- など、なんて、なんか(評価・例示)
- さえ、すら、まで(意外・添加)
- でも、だって(例示・最低限のものの提示)
- くらい、ほど(だいたいの量)
なお、「まで」は、「大学まで行く」という意味で使う場合は、格助詞です。
「Aさんまで私に嘘をついた」というときの「まで」はとりたて助詞です。
まとめ
とりたて助詞と格助詞との違い、そしてとりたて助詞の特徴について説明しました。
何かのお役に立てれば幸いです。