デフ・ヴォイス
「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (丸山正樹著 2015年 文春文庫)」を読みました。
ろう者の両親から生まれた聴者の子どもを「コーダ(Children of Deaf Adults(CODA))」というそうですが、コーダである主人公が、事件を紐解いていくミステリーです。
Amazonに掲載されていた本の紹介です。
今度は私があなたたちの“言葉”をおぼえる
荒井尚人は生活のため手話通訳士に。あるろう者の法廷通訳を引き受け、過去の事件に対峙することに。弱き人々の声なき声が聴こえてくる、感動の社会派ミステリー。
仕事と結婚に失敗した中年男・荒井尚人。今の恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一つの技能を活かして手話通訳士となる。彼は両親がろう者、兄もろう者という家庭で育ち、ただ一人の聴者(ろう者の両親を持つ聴者の子供を”コーダ”という)として家族の「通訳者」であり続けてきたのだ。ろう者の法廷通訳を務めていたら若いボランティア女性が接近してきた。現在と過去、二つの事件の謎が交錯を始め…。マイノリティーの静かな叫びが胸を打つ。衝撃のラスト!”(「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」Amazonページより引用)
感想
この本は、ミステリーとして楽しみながら、ろう者の世界についても知れるので、ろう者の世界に興味を持っている人は楽しめるのではと思います。
手話には「日本手話(Japanese Sign Language(JSL)」と「日本語対応手話」があると一般に言われています。
日本手話のほうは、日本語とは違う文法も存在し、現在は日本語とは別の言語という理解をされることが多いです。
日本手話は、ろう者の両親を持つ子どもの母語になります。また、幼児期にろう学校に入ったろう者にとっては日本手話が第一言語になります。
なお、生まれつきのろう者にとっては、日本手話が母語・第一言語で、日本語は第二言語になります。
日本手話が母語のろう者が日本語を書く際に、特に助詞の誤用が多いことが指摘されています。
「日本語対応手話」は、話している日本語を、日本手話の表現を使いながら、手話の単語に置き換えていくものです。
日本語対応手話は、日本語を手話に置き換えるというイメージで、文法や語順は日本語と同じです。
手話(sign language)ではなく、手指日本語(Signed Japanese)ともいわれます。
主に難聴者や中途失聴者が使用するようです。
とはいえ、実際はこの2つを混ぜて使っていることも多いようで、厳密に分けられるというわけでもないようです。
このミステリーにはろう者(やろう者に携わる人)が数多くでてくるのですが、それぞれの人の置かれた状況、使っている手話や考え方が違うので、物語を楽しみながら、ろう者の世界の多様性を垣間見ることができます。
このデフ・ヴォイスは続編として「龍の耳を君に (デフ・ヴォイス) 」「慟哭は聴こえない (デフ・ヴォイス)」という作品も出ているようなので、他の作品も読んでみたいと思いました。