状況と状態の違い
「状況」と「状態」の違いについて調べてみました。
デジタル大辞泉では以下のように定義されていました。
状況:移り変わる物事の、その時々のありさま
状態:人や物事の、ある時点でのありさま
ただ、これだとよくわからないので、 筑波ウェブコーパスの二語比較を使って二つの違いを調べてみました。
状態がよく使われるもの
① 体の様子
心や体の様子についていうときは「状態」がよく使われる傾向があるようです。
以下の語は、「状況」よりも「状態」と共起することが圧倒的に多いようです。
- 肌/足/筋肉/髪/爪の状態
- 寝たきり/脳死/無気力/脱水/覚醒状態
- 興奮/ショック/うつ状態
- 仰向けの状態
② 商品・機器の様子
商品や機器の様子をいうときにも「状況」より「状態」のほうが頻繁に使われるようです。
以下のようなケースは「状態」のほうが頻繁に使われます。
- (ストーブを)オフの状態にする
- 未開封の状態
- 新品の状態
③ 保つ、治す、復元するなどの動詞
状態は、見る、保つ、把握する、確認する、維持する、戻るなどといった動詞とよく使われます。
また、以下の動詞は「状態」と一緒に共起することが多く、「状況」とはあまり使われません。
- 状態を保つ・保持する・キープする(例:安定した状態を保つなど)
- 状態を治す・治療する・高める
- 状態に復元する・戻せる・戻る・回復する・改善する
状況がよく使われるもの
① 社会・組織の様子
状況は社会や組織の様子を言うときによく使われるようです。
- 被害/震災の状況
- 業界/大学/現地/各国/学校/市町村周囲の状況
これらの語は圧倒的に「状態」ではなく、「状況」と共起することばでした。
② 仕事関係の様子
仕事関係の様子を表すときも「状況」が多いようです。
- 売上/注文/在庫/開発/販売/需給状況
- 施行/取り組み/運営の状況
- 経理/勤務/研究の状況
辞書の定義で「状況」は「移り変わる物事の、その時々のありさま」とありましたが、時間的な経過を含めた様子の意味のことが多そうですね。
③ 状況は報告・説明・調査などと一緒に使われやすい
状況は、把握、確認、報告、説明、調査などといった動詞とよく使われます。
また、作り出す、変える、打破する、打開するなど変化の動詞とも一緒によく使われます。
以下の動詞は「状況」と共起し、「状態」とはあまり共起しません。
- 状況を公表・発信する
- 状況を監査する
- 状況を取りまとめる・申し上げる
まとめ
状況と状態の違いについてまとめました。
コーパスで比較した結果、状態は、心や体、商品・機器の様子をいうときに使われやすく、状況は社会・組織や仕事関係の様子をいうときに使われやすいようです。
何かのお役に立てれば幸いです。
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今回の記事を書く際に、筑波ウェブコーパスを参考にしましたが、コーパスの使い方などに興味があれば以下の本などがおすすめです。
- 李在鎬, 石川慎一郎, 砂川有里子. (2018). 新・日本語教育のためのコーパス調査入門. くろしお出版.