以前、言語教育関連の論文を読んでいたら社会ネットワーク分析を分析手法に使っていました。
社会ネットワーク分析についてあまりよく知らなかったので調べてみました。
(少し調べただけですので、不正確な情報も含まれているかもしれません。詳しくは記事最後に記載の参考文献をご覧ください。)
社会ネットワーク分析(Social network analysis)とは
社会ネットワーク分析は、人やチーム、組織、地域、政党などの関係性に着目して分析する方法です (Yang et al. 2011, p. 5)。
By Kencf0618, CC BY-SA 3.0, Link
関係性を数学的に記述していき、点(nodeやactorsやverticesと呼ばれます)と、関係性を表す線(relations, ties, links, arcsやedgesと呼ばれます)を使って、グラフ化していきます (Yang et al. 2011, p. 5)。
線は方向性が矢印で示されているものと、そうでないものなどがあります。
それぞれの点や線の色を変えたりして属性を見せることもあるようです。
社会ネットワーク分析が有用なとき
社会ネットワーク分析は、以下について知りたいときなどに便利だそうです(Canadian Hub for Applied and Social Research (
①ネットワークの構造を知りたいとき
研究手法の多くは、個人の属性に着目することが多く、個人と個人の関係性は可視化しづらいです。
社会ネットワーク分析を使うことで、人と人(または地域と地域等)の関係性(ネットワーク)にどのようなパターンがあるのか、そして、ネットワークがどのような構造をしているかを測定できます。
有名な研究では2004年米国の大統領選挙の際の政治ブログについて調べたAdamic & Glance (2005) の研究があります。
Adamic & Glanceは共和党支持者のブログと、民主党支持者のブログを分析し、どの程度おたがいを引用しているか、どの程度議論のトピックが重複しているかを、社会ネットワーク分析を使って調査しました。
その結果、民主党支持者と共和党支持者は、どちらも主に同じ政党のブログコミュニティ内でつながっており、政党を超えてのブログ上での交流は非常に少なかったということがわかりました。
また、保守党コミュニティ内のほうが、もっと関係性が密だったようです。
このようなコミュニティ内、コミュニティ間でのネットワークの構造を知るときには社会ネットワーク分析は有用のようです。
②ネットワークの中の位置づけを知りたいとき
社会ネットワーク分析は、ある人が組織・コミュニティ内でどのような位置づけにいるのかを調べるときにも活用できます。
例えば、ある組織内の人全員に、「誰とよく話すか」「誰に相談するか」などの質問に答えてもらいます。
結果を数量化した上で、グラフ化すると、組織の中でだれが重要人物なのか、組織内でどういうコミュニティ・派閥ができているのかを可視化することもできます。
社会ネットワーク分析を使った論文
学術分野別論文数
学術論文データベースのWeb of Scienceで「Social network analysis」のタイトルのついた論文を検索すると(検索日:2021年3月18日)、分野別論文数は以下のようになりました。
コンピューターサイエンス関係が多いようですね。教育関係や社会学も結構あるようです。
年度別出版数
上記で検索した「Social network analysis」のタイトルのついた論文の出版年別のグラフは以下のようになりました(検索日:2021年3月18日)。
2000年代後半から急激に増えていますね。おそらくグラフ化をするツールが開発されたり、PCの処理能力があがったりしたことで、分析がしやすくなったことが原因なのではと思います。
まとめ・参考文献
社会ネットワーク分析について紹介しました。
今回、記載する際に参考にしたのは以下の本です。
- Yang, Song, Franziska B. Keller, and Lu Zheng. Social network analysis: Methods and examples. Sage Publications, 2016.
以下のYOUTUBEのビデオも参考にしました。非常にわかりやすかったです。
- Canadian Hub for Applied and Social Research (
CHASR) (2018) Introduction to Social Network Analysis. 2018年6月9日(アクセス日:2021年3月19日)
また、知り合いには以下の本も薦めてもらいました。
- Scott, John, and Peter J. Carrington. The SAGE handbook of social network analysis. SAGE publications, 2011.