【言語学習ストラテジー】直接ストラテジーと間接ストラテジー

学習ストラテジー

言語学習をするときに、学習者は様々なストラテジーを使っています。

言語学習が得意な学習者は、効果的にこの学習ストラテジーを使っているのではないか、言語学習が得意な人が使うストラテジーはどのようなものがあるのか、といった研究が1970年代ごろからなされてきました。

学習ストラテジーとして、オックスフォード(1990)の以下の分類がよく使われます(少なくとも日本語教育関係の入門書ではこの分類がよく紹介されています。)

  • 直接ストラテジー
    • 記憶ストラテジー
    • 認知ストラテジー
    • 補償ストラテジー
  • 間接ストラテジー
    • メタ認知ストラテジー
    • 情意ストラテジー
    • 社会ストラテジー

直接ストラテジーは、直接、言語学習に役立つもののことを言います。

間接ストラテジーは、直接は役に立たないが、間接的に役に立つもののことを言います。

何が「間接」で、何が「直接」なのか判断に迷うものもあるかと思いますし、分類法自体に批判もあるようですが、ストラテジーを可視化できるので参考になるのではと思います。

直接ストラテジー

直接ストラテジーは、記憶ストラテジー、認知ストラテジー、補償ストラテジーの3つにわけられます。

①記憶ストラテジー

記憶ストラテジーというのは、語彙や文法項目などを覚えるときの具体的な方法やコツのことです。

例えば、以下のようなものがあげられます(高見沢孟 (2017, p. 295))

  • 知的連鎖を作る
  • イメージや音に結び付ける
  • 繰り返し復習する
  • 動作に移す

「知的連鎖を作る」というのは、関連する語をグループにわけたり、語呂合わせで覚えたりすることが含まれます。

例えば、英語で「random」という語彙を覚えるときに、「乱打!無理にコースを狙わず無作為の打撃で猛攻かける!」と語呂合わせにして覚えるなど(引用:「語呂合わせとイメージで覚える大学入試必修英単語3000 その406」)すると、記憶がしやすくなりますね。

絵や写真を使ってイメージして覚えたり、何度も復習するなども含まれます。

 

②認知ストラテジー

認知ストラテジーは、学習したものを自分の知識体系に組み込んでいくときに使うストラテジーです。

以下のようなものがあげられます(高見沢孟 (2017, p. 295))

  • 練習する
  • 情報内容を受け取ったり送ったりする
  • 分析したり推論したりする
  • インプットとアウトプットのための構造を作る

「練習する」というのは、何度も発音したり書いたり、実際に学んだものを使ったりすることがあげられます。

「情報内容を受け取ったり送ったりする」というのは、相手の意図を素早く理解したりすることが含まれるようです。

「分析や推論」というのは、翻訳して理解したり、わからない語彙を既存の知識を使って推論することが含まれます。例えば、「monophobia」という語彙をみたときに、その語彙の意味がわからなくても「phobia(恐怖症)」という接尾辞がついているので、何かを恐れているということだろう、という風に推論するのがこれにあたります。

 

③補償ストラテジー

補償ストラテジーは、何か問題がおきたときに対応するストラテジーのことです。また、問題を事前に防ぐためのストラテジーもこれに含まれます。

以下のようなものがあげられます(高見沢孟 (2017, p. 295))

  • 知的に推論する
  • 話すことと聞くことの限界を克服する

「知的に推論する」というのは、わからないことがあっても、言語・非言語の手がかりを使って推論しようとすることです。例えば、ジェスチャーなどを使ったりして内容を理解しようとすることが含まれます。

「話すことと聞くことの限界を克服する」というのは、母語を使ったり、誰かに頼ったりすることも含まれます。また、全部がわからないと思ったら、わかるところだけに集中して、そこに関して聞いていくなどもこれにあたります。

 

間接ストラテジー

間接ストラテジーは、メタ認知ストラテジー、情意ストラテジー、社会ストラテジーの3つにわけられます。

①メタ認知ストラテジー

メタ認知ストラテジーというのは、現在自分はどの段階にあって、目標のために何をしなければならないかなど自分の学習を把握するためのストラテジーです。

例えば、以下のようなものがあげられます(高見沢孟 (2017, p. 295))

  • 自分の学習を正しく位置付ける
  • 自分の学習を順序立て、計画する
  • 自分の学習をきちんと評価する

上記をみればわかるとおり、自分の学習を自分で管理するというものですね。

 

②情意ストラテジー

情意ストラテジーというのは、自分の感情をコントロールすることです。

例えば、以下のようなものがあげられます(高見沢孟 (2017, p. 295))

  • 自分の不安を軽くする
  • 自分を勇気づける
  • 自分の感情をきちんと把握する

自分を褒めてみたり、自分の学習を記録して感情を把握したりすることがあげられます。

 

③社会ストラテジー

社会ストラテジーというのは、他の人とのかかわりの中で学んでいくストラテジーです。

例えば、以下のようなものがあげられます(高見沢孟 (2017, p. 295))

  • 質問する
  • 他の人々と協力する
  • 他の人々への感情を移入する

他の人と協力して学習を進めたりすることなどが含まれます。

まとめ

オックスフォードの学習ストラテジーについて簡単に紹介しました。お役に立てれば幸いです。

  • Oxford, Rebecca. “Language learning strategies.” New York 3 (1990).
  • レベッカオックスフォード『言語学習ストラテジー―外国語教師が知っておかなければならないこと』凡人社 (1994)

 

なお、今回の記事を書くときに主に参考にしたのは、以下の本のp. 295-302です。

日本語教授法のクラスなどでよく使われる教科書です。体系的に、日本語教育に関する情報を得られるので、参考になると思います。