送り仮名の付け方のルールについて

送り仮名の付け方

送り仮名は漢字の読みを示すためには重要なものです。

例えば、「染」という漢字は「そ(める)」や「そ(まる)」「セン」と複数の読み方があります。「染める」と書くと、「そめる」と読ませたいのがわかりますが、「染」だけで送り仮名がないと、どう読めばいいかわからなくなってしまいます。

この送り仮名を付けるときのよりどころとなるものとして、送り仮名の付け方」を示した内閣告示があります。

現行のものは、1973年6月18日内閣告示第2号で告示され、常用漢字表の告示に伴い、1981年10月1日内閣告示第3号により一部改正されたものです。

なおこの「送り仮名の付け方」は、「一般の社会生活において現代の国語を書き表すための送り仮名の付け方のよりどころ」であり、個々人の表記にまで及ぼそうとするものではないと明記されています。

送り仮名の通則

送り仮名の付け方」の通則は7つあります。

通則1:活用のある語は、活用語尾を送る

最初のルールは、活用語尾は送り仮名を付けるというものです。

例えば、「送」という漢字は、「おく(る)」「おく(ります)」「おく(れば)」「おく(れ)」のように「おく」が語幹で、そのあとの「る」「ます」「れば」「れ」というのは、活用語尾です。

このとき、語幹は漢字で、活用語尾は送り仮名で示し、「送る」「送ります」「送れば」「送れ」のように表記します。

なお、通則1には例外がいくつかあります。

例外の1つに「語幹が「し」で終わる形容詞は,「し」から送る。」というものがあります。

例えば、「新しい」は「あたらし(く)」「あたらし(ければ)」になるので、「あたらし」が語幹で、「く」や「ければ」が活用語尾です。

なので、通則に従えば、「新い」「新ければ」になりそうですが、形容詞の「し」で終わるものは「新い」と「し」から送ります。

通則2:活用語尾以外の部分に他の語を含む語は、含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。

この通則は、ある語から派生した語であれば、もとになる語の送り仮名を優先するというものです。

例えば、「動かす」は、通則1に従うと、「うごか(す)」「うごか(せば)」「うごか(します)」となり、「うごか」が語幹になります。

通則1に従うと、送り仮名は「動す」「動せば」となりそうですが、通常は「動す」「動せば」となります。

なぜかというと、「動かす」は「動く」という語から派生した語だと考えられるからです。この場合、「動く」の送り仮名に合わせて表記します。

送り仮名の付け方」で例が紹介されているので一部抜粋します(〔  〕がもとになる語です)。なお、この記事に記載の例はすべて「送り仮名の付け方」より抜粋しています)

  • 動かす〔動く〕   照らす〔照る〕   語らう〔語る〕   計らう〔計る〕   向かう〔向く〕   浮かぶ〔浮く〕   生まれる〔生む〕   押さえる〔押す〕   捕らえる〔捕る〕 、んずる〔重い〕   やぐ〔若い〕   怪しむ〔怪しい)   悲しむ〔悲しい〕   苦しがる〔苦しい〕   確かめる〔確かだ〕、ばむ〔汗〕   んずる〔先〕   めく〔春〕   らしい〔男)

通則3:名詞は送り仮名を付けない。

基本、名詞は送り仮名をつけません

例としては、以下があります。

 月   鳥   花   山   男   女   彼   何

この通則3も、数を数える「一つ」「二つ」には「つ」を送るなどの例外もあります。

通則4:活用のある語から転じた名詞等は、もとの語の送り仮名の付け方によって送る。

通則4は、通則2と同様、ある語から派生した名詞は、もとの語の送り仮名に従うというものです。

例えば「動き」という名詞は、動詞「動く」から派生していると考えられます。

なので、名詞ですが「動」と送り仮名をつけないのではなく、「動く」という動詞の送り仮名に従って「動き」と送り仮名を付けます。

他にも以下のような例があります。

  •    仰   恐   薫   曇   調   届   願   晴   当たり   代わり   向かい   狩   答   問   祭   群   憩   愁   憂   香   極   初   近   遠

また、以下のように、もとの語に「さ」,「み」,「げ」などの接尾語が付いて名詞になったものも送り仮名を付けます。

  • 暑さ   大さ   正さ   確さ   明み   重み   憎み   惜

ただ、通則4にも「印」「預」「帯」「氷」「話」など例外はあります。

通則5:副詞・連体詞・接続詞は、最後の音節を送る。

副詞・連体詞・接続詞も、名詞同様、活用のない語です。ただ、副詞・連体詞・接続詞の場合は後の音節を送ることが原則です。

  •    更   少   既   再   全   最   来   去   及   且   但

この通則の例外としては、最後の音節以外も送っている「大いに」「直ちに」「並びに」や、送り仮名をつけない「又」などがあります。

通則6:複合の語の送り仮名は、その複合の語を書き表す漢字の、それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。

複合語は、語と語が合わさったものなので、もとの語の送り仮名の付け方に従うというものです。

例えば、「書き抜く」という複合語だと「書く」と「抜く」が合わさってできているので、送り仮名も「書く」と「抜く」の送り仮名の付け方に合わせて、活用語尾を送る(通則1)ということです。

また、「石橋」は、「石」と「橋」が合わさったものですが、「石」と「橋」は名詞で、名詞は基本送り仮名を付けないので(通則3)、「石橋」となります。

例としては以下のようなものがあります。

  • 活用のある語
    •    流   申   打わせる   向かいわせる   長引   若返   裏切   旅立   聞しい   薄暗   草深   心細   待しい   軽々しい   若々しい   女々しい   気軽   望
  • 活用のない語
    • 石橋   竹馬   山津波   後姿   斜左   田植   封切   物知   落書   雨上がり   墓参   日当たり   夜明かし   先駆   巣立   手渡
      寒空   愚者 行   伸   乗   粘   乳飲子   無理強  次々   休

通則7:複合の語のうち、次のような名詞は、慣用に従って、送り仮名を付けない。

複合語は通則6に従って基本はもとの語の送り仮名に合わせますが、慣用が固定していると認められるものは送り仮名を付けません

(1)特定の領域の語で、慣用が固定していると認められるもの。

  •  地位・身分・役職等の名(関取   頭取   取締役   事務取扱)
  •  工芸品の名に用いられた「織」、「染」、「塗」等(《博多》織   《型絵》染   《春慶》塗)
  • その他。(書留   気付   切手   消印   小包   振替   切符   踏切   請負   売値)

(2)一般に、慣用が固定していると認められるもの。

  • 奥書   木立   子守   献立   座敷   試合   字引   場合   羽織   葉巻   番組   番付   日付   水引   物置   物語   役割   屋敷   夕立   割合 合図   合間   植木   置物   織物   貸家   敷石   敷地   敷物   立場   建物   並木   巻紙

まとめ

送り仮名の付け方についてまとめました。

この記事の最初にも述べたように、「送り仮名の付け方」は「一般の社会生活において現代の国語を書き表すための送り仮名の付け方のよりどころ」を示すものであって、個々人の表記を規制するものではありません。

ただ、知っておくと便利なのではないかと思います。

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↑日本語の歴史に興味があればこのような新書もあります。