ピジン(pidgin)とクレオール(creole)の違いについて
ピジンとクレオールの違いについてです。簡単にいうと以下のように分けられます。
- ピジン:異なる言語を話す人々の共通語として、互いの言語が混合して生まれた新たな言語。誰の母語話者でもない。
- クレオール:ピジンが母語話者を持つようになったもの
ピジンとは
ピジンは「異なる言語を話す人々の共通語として、互いの言語が混合して生まれた新たな言語」と言われます。
ただ、一般にピジンというと、16世紀以降アフリカ・東南アジア・中南米・カリブ海などの欧米諸国の植民地で、ヨーロッパ系言語と現地語の接触で生まれたものを指すことが多いです。
植民地では、入植者と現地の人との間でコミュニケーションする必要がありました。
ただ、お互い共通言語を持たないので、意思疎通は難しかったと考えられます。
今もそうですが、お互いの共通言語がない場合、簡単な単語のみを使う、ジェスチャーを使う、文法を簡素化するなどして、なんとかコミュニケーションをしようとすると思います。
そういった中でうまれた言語がピジンです。ピジンには以下の特徴があります。
- 簡略化された文法体系
- 必要最低限の語彙
- わかりやすい発音
意思疎通できる最低限の言語ともいえると思います。
ピジンのポイントは、異なる母語話者の間の接触言語であって、誰の母語でもないということです。
ちなみに、ピジンは英語の「business」が中国語風に変化したものともいわれていますが、諸説あるようです。
クレオールとは
ただ、最初は異なる言語を話す人々とのコミュニケーションとして生まれたピジンの中には、使う人の幅が増え、地域に根付き、世代を超えて受け継がれていくものも出てきます。
日常生活でピジンが使用されるようになり、その地域の人の母語として使われるようになったものをクレオールといいます。
クレオールは、語彙・文法・発音ともに複雑化することがわかっています。
なお、クレオールは、フランス語で(Créole)、スペイン語(Criollo)、ポルトガル語(Crioulo)といい、「植民地に生まれたヨーロッパ人」という意味です。
言語に使われる場合は「植民地等で使われている、ヨーロッパ系言語との混成言語」という意味で使われます。
ただ、どこまでがピジンで、どこからがクレオールかをわけるのは難しく、「ピジン・クレオール」ということもあります。
有名なピジン・クレオール
よく知られているピジン・クレオールとしては以下のものがあります。
トク・ピジン(Tok Pidgin)
「ピジン」と入っていますが代表的なクレオールの例としてよく挙げられます。
英語系クレオールで、パプアニューギニアの公用語の一つです。
ハイチ・クレオール
ハイチ語ともいわれます。ハイチの公用語の一つで、フランス語系クレオールです。
セーシェル・クレオール
インド洋セーシェルで使われているフランス語系クレオールです。セーシェルの公用語の一つです。
ハワイ・クレオール英語
ハワイ・ピジン英語ともいわれます。19世紀後半から移住してきた移民の間の意思疎通のために発達した言語です。
ご興味のある方は、ハワイ大学の「The Charlene Junko Sato Center for Pidgin, Creole, and Dialect Studies」の「Language Varieties」のサイトから音声などを聞けるようになっています。
まとめ
ピジン・クレオールについて簡単にまとめました。
ご興味のある方は以下のような本もあります。
- Siegel, Jeff. The emergence of pidgin and creole languages. Oxford University Press, 2008.