「近代書き言葉はこうしてできた」読了。コーパスを使ってこんな研究ができるんですね。

岩波書店の「そうだったんだ!日本語」シリーズの一つ、田中(2014)「近代書き言葉はこうしてできた」を読みました。

  • 田中牧郎,『そうだったんだ! 日本語 近代書き言葉はこうしてできた』, 2013 , 岩波書店

雑誌「太陽」のコーパス(言語データベース)を使って、明治後期から大正まで書き言葉がどう変化していったかを、文体・語彙等に分けて述べていました。

日本語のコーパスは国立国語研究所の中納言などが有名だと思います。私は、ときどきコロケーション(「ギター」という言葉はよく「ひく」と一緒に使われるなど、単語と単語のよくある組み合わせのこと)を調べたい時に使うぐらいで、全然使いこなせていませんが、コーパスを使ってこういう研究もできるんだなと参考になりました。

また、文語体から口語体への移行について書いた章のところで、敬体の口語文の文末が「でございます体」から「であります体」、「です体」に変化していったと書いてあったのですが、そのときに現在の普通体・丁寧体の間のスタイルシフトと同じようなスタイルシフトが、雑誌「太陽」に掲載されている口語文で書かれた演説文でも見られていたのは興味深かったです。

この本で紹介されていた演説文では、「でございます体」と「であります体」を交ぜて使い、強調したいときにはあえて「であります体」を使ったりしていました。また時代を経るとこういったスタイルシフトが「であります体」と「です体」の間で行われるようになったそうです。

また語彙の変化に関する章では、中心から周辺に追いやられる言葉(使われなくなる言葉)、逆に周辺から中心へと地位を確立していく言葉(どんどん使われるようになる言葉)について分析していました。全体的に和語よりも漢語のほうが、新語も死語も多いようです。また、地位を確立していく言葉は、既存の似たような言葉と縄張り争いをし、自らの縄張りを作り上げていっているという分析はおもしろかったです。