CEFRの補遺版について
CEFRは、「Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment」の略で、「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠」のことです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2018年2月に、CEFR補遺版と言えるThe CEFR Companion Volume が発表されました。
この補遺版で何がかわったかというのを、CEFR補遺版の執筆に携わったErica Piccardoが説明していたので(『Macmillan Education ELT, Changes to the CEFR: Interaction & Mediation with Enrica Piccardo, 2018年4月20日』(アクセス日:2020年9月14日))、この講演をもとに説明します。
Mediation(仲介)について
CEFRでは4技能(読む・聞く・話す・書く)ではなく、4つのコミュニケーションモード(受容(reception)、産出(production)、やり取り(interaction)、仲介(mediation))という分け方をしています。
このうち、CEFR補遺版で大きく追加されたのが「仲介(mediation)」の部分です。(2001年のCEFRでは仲介についてそこまで詳しく記載していませんでした)
なお、この記事ではmediationを「仲介」と翻訳していますが、「媒介」などと翻訳されることもあるようです。
仲介(mediation)の分野
補遺版では、仲介について大きく分けて3つの活動を挙げています。
「mediation」というと、日本語だとあまりよくイメージがわかないかもしれませんが、自分が間にたって「誰かと誰かをつなぐ」とか「誰かと何かをつなぐ」「何かと何かをつなぐ」というようなイメージに近いかと思います。
基本は、英語だと「テキストとテキストをつなぐ」という意味で、情報を伝えたり、翻訳したりするという意味でよく使われるようです。
このCEFR補遺版では、この「仲介」の概念を広くとっており、「仲介活動」として、大きく分けて3つの活動を挙げています。
- テキストを仲介する(情報を伝えたり、データを説明したり、翻訳したり、文学等の分析・批判をする)
- コミュニケーションを仲介する(衝突を解決する、インフォーマルな場面で仲介者ととなる)
- 概念を仲介する(共同作業を促進する、グループワークをリードする)
「コミュニケーションを仲介する」は、「人」と「人」を仲介するという意味に近く、違う意見の人をつなげたりすることなどが含まれます。(日本語でいう「仲介」のイメージに近いかもしれません)
「概念を仲介する」は、他の人がある知識や概念にアクセスできるようにすることを言います。「概念」と「人」をつなげるというイメージでしょうか。特に相手との共同作業で、自分の知っている知識を相手に伝え、共通理解の基盤を作ったりすることなどが含まれるようです。
それぞれの仲介活動に能力記述文を作り、どのレベルでどんなことができるようになるかということを記載しています。
また、仲介は言語間や言語変種間、レジスター間で行われることもあれば、一つの言語内・変種内・レジスター内で行われることもあります。
さらに、CEFR補遺版では、仲介ストラテジーについても詳しく記載しています。
まとめ
CEFR補遺版で大幅に追加された、仲介について紹介しました。
補遺版では、「ネイティブスピーカー」という記載が消されていたり、音韻についても記載が変わったりと他にも変更がなされています。
CEFR補遺版については、以下のページから無料でアクセスできるので、興味のある方は原文をお読みください。
CEFR自体に興味のある方は以下のような本もあります。
- 奥村他(2016) 『日本語教師のためのCEFR』くろしお出版