オーディオリンガルメソッドについて
オーディオリンガルメソッドは、構造主義言語学・行動主義に基づく教授法です。
アメリカの言語学者フリーズが提唱者でミシガン大学で外国語教育を行ったことから、ミシガンメソッドやフリーズメソッドとも言われます。
構造言語学は、言語というのは音声であり、音素・形態素・語・文といった体系・構造(structure)をもっているという考えに基づくものです。
また、行動主義は、「刺激」を与えると「反応」が起こり、その繰り返しで「習慣」ができるという考え方です。
オーディオリンガルメソッドはこの2つの影響を受けて形成された教授法で、言語の構造、特に文型などの言語の「型」の習得を重視し、外国語の学習を新しい習慣の獲得と考えています。
オーディオリンガルメソッドの特徴
①音声重視
オーディオリンガルメソッドは音声を重視しています。
なので、口頭練習が多いのが特徴です。
②パターン・プラクティス(pattern practice)・ミムメム
オーディオリンガルメソッドでは、言語の型を学ぶことを重視しているので、パターン・プラクティス(文型練習)がよく取り入れられます。
これは教師がキューを出し、それに学習者が反応するというものです。
以下の置換練習がその一例です。
学生:きのう、学校に行きました。
教師:スーパー
学生:きのう、スーパーに行きました
教師:公園
学生:きのう、公園に行きました。
教師の「スーパー」「公園」などというキューに対し、学生が反応して文を作っています。
こういう反復練習を通して学習者の反応を強化し、習慣形成をすることをオーディオリンガルメソッドは目的としています。
また、教師のモデル発音を学習者が繰り返し、会話文を記憶するというミムメム練習(mim-mem=mimicry and memorization(真似して記憶する練習))もよく取り入れられます。
それ以外には、「おじいさん」と「おじさん」の2つを言って、発音の違いを認識させるようなミニマルペア練習もオーディオリンガルメソッドの練習方法の1つです。
③母語話者の音声・文法的正確さを要求
オーディオリンガルメソッドでは、発音や文法面で初級の段階から、母語話者の正確さを求めます。
文法の間違いはそのままにするのではなく、訂正されます。
オーディオリンガルメソッドの批判
オーディオリンガルメソッドの批判としては以下のようなものがあります。
①実践的なコミュニケーション能力がつかない
パターンプラクティス(文型練習)やミムメム練習をしただけでは、自発的に文を作る力や、相手に合わせてコミュニケーションする力が身に着かないといわれています。
また、文法があっていても、「あなたは何歳ですか」と初対面の人に聞くのは失礼にあたる場面も多いですが、そういった言語の適切さを軽視しているともいわれます。
②文字教育が遅れる
口頭練習を重視しているため、読解力や作文力の発達が遅れるという批判もあります。
③学習者の情意面への配慮が足りない
練習が機械的で単調なことが多いので、学習者は飽きてしまうこともあります。
また、初級の段階から、母語話者レベルの音声的・文法的正確さを求めることはかなり学習者の心理的負担になるとも言われています。
まとめ
オーディオリンガルメソッドについてまとめました。
このような批判がありますが、現在も特に初級の文法導入のときなどはオーディオリンガルメソッドにあるような文型練習はよく使われているように思います。
なお、オーディオリンガルメソッドを取り入れた教科書としては、日本語教育では、Eleanor Harz Jordenの「Beginning Japanese」(1962)が有名です。
- Eleanor Harz Jorden(1962)「Beginning Japanese」
エレノア・ジョーデンはアメリカにおける日本語教育で多大な貢献をした学者で、この教科書は非常に有名です。「ジョーデン・メソッド」と言われたりもします。
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