参考にした本
以前、「にわたって」と「を通して」の違いについてについて紹介しました。
今回は、「~を通して」と「~を通じて」の違いについて記載します。
参考にしたのは、以下の本のp. 162-163です。
- 東京外国語大学留学生日本語教育センター グループKANAME (2007). 『複合助詞がこれでわかる』. ひつじ書房
↑東京外国語大学生日本語教育センターの教師12人が中級レベルで導入される複合助詞について解説した本です。
他の形式との比較や教えるときの注意点も記載されているので、大変役に立ちます。
「を通して」と「を通じて」の違い
①「を通じて」は介在物を示すときはあまり使われない
「Xを通じてY」は、Xが介在物を示すときにはあまり使われないようです(p. 162)。
- バスルームからベッドルームを通して外が見える(?~を通じて)
- 道路から建物を通して海が見える(?~を通じて)
- 足の裏を通して振動を感じる(?~を通じて)
Xには「ベッドルーム」や「建物」「足の裏」など何か具体的なものや現象、Yには「見える・感じる・聞こえる」のような知覚動詞がきます。
介在物というのは、知覚するのにXという具体的なもの・現象が「介在物」として存在するという意味です。
介在物の意味で使用するときに、「~を通じて」が使われる例は少なく、「~を通じて」が使えるものは聴覚で知覚されるものに限られるようです(p. 162)。
- 壁を通して/を通じて人の声が聞こえる
②「~を通じて」は否定形や文末で使用できない
「~を通して」は否定形や文末にも使うことができます。(p. 162)
- 仲介業者を通さずに/を通さないで、直接商品を売買する。
- この商品を買うには、仲介業者を通してください。
「~を通じて」はそのように使うと変です。
- ??仲介業者を通じずに/を通じないで、直接商品を売買する。
- ??この商品を買うには、仲介業者を通じてください。
まとめ
「~を通して」と「~を通じて」の違いについて記載しました。
上記に紹介した本にはもっと詳しく「~を通して」「~を通じて」の使い方について記載されていたので、興味のある方はそちらもご覧ください。
それ以外にも、一般的には、「-を通じて」のほうが書き言葉的と言われているようです。
また、「どんなときどう使う 日本語表現文型辞典(p. 427)」によると、それだけでなく、「-を通して」のほうが後に積極的・意志的なことを表す文が多いともいわれるようです。