寺村秀夫の連体修飾の「内の関係」と「外の関係」について

連体修飾の内の関係と外の関係について

下記の文を見てみてください。

  1. さんまを焼いているがいる。
  2. さんまを焼いているにおいがする。

 

連体修飾の「内の関係」と「外の関係」を説明する例文として使われる「さんまを焼く」文です。

 

(1) の場合は、「さんまを焼いている」が「」を修飾しています。

(2) の場合は、「さんまを焼いている」が「におい」を修飾しています。

 

なので、どちらも連体修飾節です。

 

ただ、この2つには違いがある、と指摘したのが寺村秀夫です。

 

  • 寺村秀夫(1992). 寺村秀夫論文集I .くろしお出版

↑この本に収録された論文に記載されています。もともとの論文は1975年から1978年にかけて発表されました。

 

内の関係

(1)の文は「内の関係」の文です。

「1.のさんまを焼いているがいる。」は、次の2つを合わせて作られた文です。

  • (1a) がいる
  • (1b) さんまを焼いている。

内の関係では、修飾節の述語(「焼いている」)と、修飾される名詞(「人」)との間に何らかの格関係があります

 

格関係とは、ざっくりと言ってしまうと、文の中で、主に「が」、「を」、「に」などの格助詞で表せる関係のことです。

「さんまを焼いている」は「さんまを焼いている」という「ガ格(主格)」で表せます。

 

他にも内の関係には、以下のような例があります。

  • ご飯を作ってくれた女性にお礼をいった。

(私は)女性にお礼をいった。+ 女性ご飯をつくってくれた。

  • 昨日食べたご飯はすごくおいしかった。

ご飯はすごくおいしかった。+ 昨日ご飯食べた。

  • 私がメールを書いた男性から返事が届いた。

男性から返事が届いた + 私が男性メールを書いた。

 

外の関係

(2)の文は「外の関係」の文です。

「2. さんまを焼いているにおいがする。」は、修飾節の述語(「焼いている」)と、修飾される名詞(「におい」)との間に何らかの格関係がありません。

  • (2a) においがする
  • (2b) さんまを焼いている。

2bは以下のようには表せません。

  • においさんまを焼いている
  • さんまにおい焼いている
  • さんまをにおい焼いている

このような格関係がみられないものを外の関係と寺村は呼びました。外の関係の場合、述語(「焼いている」)は修飾される名詞(「におい」)の内容(どんなにおいか)について具体的に述べています

 

 

他にも以下のような例があります。

 

  • ドアをたたくが聞こえた。

が聞こえた + ドアをたたく
(× ドアをたたく、×ドアをたたく、×ドアをたたく)

  • このプロジェクトが成功した原因は、Aさんの活躍にある。

原因は、Aさんの活躍にある。+ このプロジェクトが成功した
(×原因このプロジェクト成功した、×このプロジェクトが原因成功した、×このプロジェクトが原因成功した)

  • Aさんが結婚したを聞いた。

を聞いた + Aさんが結婚した
(×Aさんが結婚した、×Aさんが結婚した、×Aさんが結婚した)

 

もっと興味のある方は

名詞修飾については様々な研究がなされていて、面白いです。興味があれば以下のような本もあります。

  • プラシャント・パルデシ・堀江薫(編)(2020) 日本語と世界の言語の名詞修飾表現. ひつじ書房

↑2020年5月20日に発売予定です。名詞修飾表現に関するプロジェクトの成果をまとめた本のようです。