Halpern (2013)の「Thought and Knowledge: An Introduction to Critical Thinking (第5版)」の第二章とその他の章もぱらぱらと読みました。
- Halpern, Diane F. Thought and knowledge: An introduction to critical thinking. Routledge, 2002.
第二章では記憶が認知プロセスの媒介をするといった上で、記憶についていろいろな研究を紹介していました。目的は考えるもととなる記憶について知った上で、critical thinkingにいかしていこうというものだと思うのですが、記憶に関する細かい研究のほうが読んでいて面白かったので、いくつかメモしておきます。研究自体はたくさん紹介されていたのでほんの一部です。
①重大な事も記憶しない
Simons and Levine(1998)の研究によると、知らない人に道を教えているとき、大きな物体が目の前を通過し、その間に相手が別の人に変わっていても50%の人は気づかなかったらしいです。
こういった大きなことに気づかないことを「change blindness blindness」(Scholl, Simons & Levin 2004)というそうです。
このサイトで、自分でもそれを試すことができます。
http://www.simonslab.com/videos.html
私もやってみましたが、見事に気づきませんでした。
②記憶は当てにならない
Illusion of truth(真実の幻想)というのがあって、嘘であっても何回も聞くと、それを本当だと思う確率が増えるらしいです(Moons, Mackle & Garcia-Marques 2009)。明石家さんまさんが嘘でも何回でも話すと本当になる、と言っていたのを思い出しました。それと似ていると思います。
③ステレオタイプは記憶に影響を及ぼす
Snyder and Uranowitz (1978)の研究で、学生にベティ―の生活についてのストーリーを読ませたそうです。その中でベティ―はときどき男の人とデートしていたという情報も入っていました。このストーリーを読んだ後で、半分の学生にはベティ―がレズビアンで、残りの半分の学生にはベティ―は異性が好きだと伝えたそうです。一週間後、ストーリーについて質問をした結果、ベティ―がレズビアンと聞かされた学生は「ベティーは男と付き合ったことがない」という質問に丸をつける確率が高かったそうです。
それ以外も記憶についておもしろい研究や、記憶力を高める方法などいろいろ紹介されていました。
他のところもパラパラ見ていて、critical thinkingは問題解決に向けた実務的な「スキル」として考えられているんだなという印象を受けました(実際にcritical thinking skillsと書いてましたし)。