Zoltán Dörnyeiのモチベーションに関する研究
以前、Zoltán Dörnyeiの学習のモチベーションに関する研究について紹介しました。
今回は、Dörnyeiの以下の講演を視聴しました。
- Dörnyei, Zoltán. Motivating L2 learners and teachers through vision. Cambridge University Press ELT ‘Better Learning’ conference, August 2016
ビジョン(vision)について
この講演で、Dörnyeiは、言語学習におけるビジョン(vision)の大切さについて話していました。
「ビジョン」というと、「経営ビジョン」のように、「目標」と同じように使われることも多いですが、Dörnyeiのいうビジョンは脳で可視化できる、具体的なものです。
マラソン選手だったら、自分がその大会で優勝している様子をイメージするなどがその例にあげられます。
言語学習だと、学習言語を駆使して仕事をしている自分など、言語学習を通して実現したい「理想的な自己」がそのビジョンになるかと思います。
ウォルト・ディズニーの有名な言葉にこんなものがあるそうです。
自分が可視化できるのであれば、夢が見られるのであれば、それが実現できる方法があるということです。
ディズニーは確固とした「ビジョン」を持っていたのではないかと思います。
ちなみに、1971年にフロリダにウォルト・ディズニー・ワールドがオープンしたとき、ウォルト・ディズニーは既に逝去していたそうです。
オープニングセレモニーで「ウォルトもこれを見られればよかったのに」という言葉に対し、妻のリリアンは「ウォルトはもう見ましたよ」といったという逸話があるそうです。
ちなみに、物理的にリンゴを見るときも、いわゆる脳の目を通して理想の自分というビジョンをイメージするときも、脳は同じところが反応しているそうです。
脳で可視化できるような、具体的なビジョンを持つことが、言語学習の成功のカギとなるといっていました。
言語教育で学習者・教師自身がモチベーションを保つために
Dörnyeiは、言語学習では、学習者・教師ともに、このビジョンを考え、強化し、現実的なものとすることが必要と述べています。
また、「こういう自分になりたい」という具体的なビジョンがあったとしても、周りからネガティブなことを言われたりすると、それがつぶされてしまうこともあります。
なので、実現のためのステップを作り、維持していくことも大切になります。
また、できればそのビジョンが失敗した時のことをイメージするのも重要だそうです。
もっと興味のある方は
この講演の内容は詳しく下記の本にまとめられているそうです。
- Zoltán Dörnyei, Magdalena Kubanyiova (2014) Motivating Learners, Motivating Teachers: Building the Vision in the Language Classroom. Cambridge University Press, 2014
- ゾルタン・ドルニェイ(著)米山 朝二・ 関 昭典(訳) (2005)『動機づけを高める英語指導ストラテジー35』大修館書店
↑上記の本ではないですが、ドルニェイの本で和訳されているものもあるようです。