公認日本語教師の創設に向けた流れ
2020年2月に、日本語教師の国家資格「公認日本語教師」が創設される見通しと発表されました。
2020年3月10日は、文化審議会国語文化会が「日本語教師の資格の在り方について(報告)【案】」(以下、「報告書」)を公開しました。
今回は、この報告に基づき、公認日本語教師についての現時点の情報をまとめたいと思います。
なお、前年の2019年6月に日本語教育の推進に関する法律が成立しました。
この法律の21条には、「国内における日本語教師の資格に関する仕組みの整備等の施策を講ずる」との定めがあります。
今回の公認日本語教師創設も、この日本語教育推進の流れにあると考えられます。
資格制度創設の目的
報告書は、創設の目的として以下の4つを挙げています。
- 質の高い日本語教師の確保
- 日本語教師の量の確保
- 日本語教師の多様性の確保
- 日本語教師の資質・能力の証明
国内の外国人が2020年6月現在約283万人にのぼり、日本語学習者数も約26万人と過去最高を記録したにもかかわらず、現在の日本語教育人材は約4万人でその約6割がボランティア、職業としての日本語教師は約1万9千人にとどまっているようです。
多様化するニーズに対応できる日本語教師の養成・確保が課題という背景があります(報告書 p. 4)
制度の仕組み
①資格について
名称は「公認日本語教師」で、国家資格として設計するそうです。
②取得要件
以下の3つだそうです。
- 知識の有無を測定する試験の合格
- 教育実習の履修
- 学士以上の学位
現在も日本語教育能力検定試験などはありますが、知識のみでなく、教育実習の履修があることや、大学教育が必要などがポイントですね。
ちなみに教育実習は45コマ以上で、2コマ(90分)以上の教壇実習を含むようです。
年齢・国籍・母語は資格の要件とはしません。
③有効期限
資格には有効期限が設けられるようです。10年程度で更新が必要になるそうです。
更新時には更新講習の受講が義務付けられるとのことです。
まとめ
今後、試験の内容・方法、実施期間、更新講習等については詳しく決まっていくものと思います。
また、既に日本語教師の要件を満たす人は、経過措置の対象となり、試験を新たに受けなくても、移行期間中に公認日本語教師として登録ができるようにする方針のようです。
近年の国内の日本語教育の動向に興味のある方は以下のような本もあります。
- 牲川波都季・有田佳代子・ 寺沢拓敬・庵功雄(2019)『日本語教育はどこへ向かうのか ―移民時代の政策を動かすために』くろしお出版
- 神吉宇一(編) (2015)『日本語教育学のデザイン―その「地」と「図」を描く―』凡人社
神吉は文化審議会国語分科会日本語教育小委員会の「日本語教育能力の判定に関するワーキンググループ」のメンバーでもあります。