イマ―ジョンプログラムとは?
イマ―ジョンプログラム(immersion program)とは「immersion(浸す)」という言葉にもあるとおり、ある言語に「どっぷり浸る」プログラムということです。
習得したい言語を語学のクラスで学ぶのではなく、その言語を使って教科を学びます。
もともとは1960年代からカナダで英語・フランス語のバイリンガル人材を育てるために始まりました。
教科を学習言語で学ぶため、普通の外国語プログラムより圧倒的にその言語への接触量が多く、学習言語での高い読み書き能力も養えることが特徴です。
イマ―ジョンプログラムの種類
ただ、一口に「イマ―ジョンプログラム」といっても以下のように様々な種類があります。(この分類は、「Bilingual Education: An Introductory Reader (Bilingual Education and Bilingualism)」(p. 23)によるものです)
- 早期トータルイマ―ジョン(early total immersion)
- 早期パーシャルイマ―ジョン(early partial immersion)
- 中期トータルイマ―ジョン(delayed total immersion)
- 中期パーシャルイマ―ジョン(delayed partial immersion)
- 後期トータルイマ―ジョン(late total immersion)
- 後期パーシャルイマ―ジョン(late partial immersion)
トータルイマ―ジョン(total immersion)・パーシャルイマ―ジョン(partial immersion)
トータルイマ―ジョンというのは、基本は教える科目のすべてを学習言語で学ぶということです。
パーシャルイマ―ジョンは一部の課目又は時間を、学習言語にあて、その他のクラスは母語で受けるということです。
どの科目・時間をあてるか、学習言語と母語の比率については、特に決まった定型があるわけではないようです。
早期・中期・後期
どの学年からイマ―ジョン教育を始めるかという点です。
早期は、幼稚園・小学校低学年からイマ―ジョン教育を始めるということです。
早期トータルイマ―ジョンだと、幼稚園・小学校低学年の間は、全部の課目を学習言語で学ぶことになります。ただ、この場合、高学年になると、母語の授業が導入され、パーシャルイマ―ジョンになることも多いようです。
中期は、小学校の中~高学年でイマ―ジョン教育を始めるということです。
この場合、小学校の低学年は母語で授業を行いますが(学習言語は外国語科目などで行われます)、中・高学年になると算数・理科などの課目を学習言語で学ぶというパターンです。
後期は、中学校からイマ―ジョン教育を始めるということです。
イマージョンプログラムの成功のためには
イマ―ジョン教育はカナダのみならず、様々な地域で行われていますが、必ずしもうまくいくというわけでなく、場合によっては減算的バイリンガリズムになってしまう可能性もあります。
以前もイマ―ジョンプログラムについての記事を紹介しました。
中島(2016, p. 108-110)では、成功の要因として以下のようなものあげていました。
- ことばの「使い分け」がはっきりしていること(学習言語を使う環境と、母語を使う環境がわかえられている)
- 学習言語での接触量が十分にあること
- イマ―ジョン教育を受けるか受けないかが本人・親の選択に任されていること
- コミュニケーションの道具として外国語を授業で使っていること(自己修正の機会や、学習言語の使用を強制されない期間も与えられていること)
- 親・教師・社会がバイリンガル教育への理解を示していること
- 小学校の場合は、中学校・高校まで見据えたプログラムがあること
ご興味のある方は
以下の記事もご覧ください。
- ダブル・リミテッド・バイリンガルとは?ダブル・リミテッド現象の年齢・領域・要因について
- バイリンガリズムの概念:同時性・後続性・加算的・減算的バイリンガリズムについて
- 年少者向けのバイリンガル・マルチリンガルプログラムの種類について
- Cumminsの相互依存モデル、BICSとCALPについて
- Translanguagingとは何か?Bilingualismとの違いは?
- 子供のバイリンガル教育に関するFred Geneseeの講演を視聴しました。
- Fred Geneseeのイマージョンプログラム(immersion programs)に関する講演も視聴しました。
- 内容言語統合型学習(CLIL)とは何か?CLILの「4つのC」について(Content, Communication, Cognition, Community
日本語書籍だと中島(2016)にイマ―ジョンプログラムについて言及があります。