Schauerの留学前後の語用能力に関する研究
Schauer(2009)の本について紹介します。
- Schauer, Gila. Interlanguage pragmatic development: The study abroad context. Bloomsbury Publishing, 2009.
この本では英国に留学したドイツ語母語の上級学習者の依頼表現に対する意識向上と、産出能力の上達を考察していました。
学習者は、留学期間中に複数回、以下のタスクをしたそうです。
- 20の動画を見て依頼表現の適切さを判断するタスク+インタビュー
- 16の依頼の場面で、実際に自分ならどういうかを答える産出タスク
この結果を留学していない学習者とネイティブスピーカーとの比較を通して考察していました。
研究の結果
結果としては、適切さの判断や産出能力ともに、留学を通して向上が見られたといっていました。
留学をしていない学習者グループと比較すると、留学した学習者グループは多様な依頼表現を習得していたそうです。
ただ、すべての項目において向上が見られたというわけではなく、目上の人に依頼するときに、「I wanted to ask you if you could…」というような、あまり使わない表現を多用するなど、伸びが見られない項目も見られたようです。
こういう表現は母語話者は使っていなかったとのことですが、ドイツ語では使う表現だそうなので、ドイツ語から母語の転移があるのはないかと言っていました。