日本語中上級向けの会話教材
日本語の中級・上級になると、日常会話ができることもあり、会話の授業で何を指導すればいいか、迷うことがあります。
そんなときのためにいくつか会話教材を紹介します。
①日本語上級話者への道・日本語超級話者へのかけはし
- 荻原 稚佳子 他(2005)日本語上級話者への道―きちんと伝える技術と表現. スリーエーネットワーク
中級レベル学習者向けの会話教材です。
この本では中級話者は3つの課題があると指摘しています(p. 4)
- 話題について話すとき、内容について何を話すか期待されているかがわかっていない。
- まとまりがなく、何をいいたいのか伝わりにくい
- 話題に応じた語彙や表現の不足
この3つの課題に対応すべく、「自己紹介で好印象を与えよう(第1課)」「きっかけを語ろう(第2課)」などのテーマで構成されています。各課ごとに具体的な目標も定められおり、段階を踏みながら練習できるようになっています。
- 荻原 稚佳子 他(2007)日本語超級話者への道―きちんと伝える技術と表現. スリーエーネットワーク
上記の本のシリーズで超級話者向けの会話教材も出ています。
上級話者向けの会話教材はなかなかないので、ありがたいです。
どちらの教科書とも、各話題について話すとき、どういう構成で話せばいいか、意識させるものが多いです。
また、語彙が比較的たくさん導入されているので、語彙を増やすという意味でもいいと思います。
ただ、これは私個人の問題かもしれませんが、授業では語彙や構成の説明に意外と時間がかかり、実際の練習時間があまりないときも多いです。
②会話の授業を楽しくする コミュニケーションのためのクラス活動40
- 石黒圭(編)(2011) 会話の授業を楽しくするコミュニケーションのためのクラス活動40
―初級後半から上級の日本語クラス対象.スリーエーネットワーク
この本の目的はコミュニケーションを養成することを目的にしており、以下の3点を特徴としています。
- 日本語を教えない(言葉の形式よりも内容を重視)
- 言わないことは教えない(学生が言いたいことを話す。言うべきことを押し付けない)
- ストラテジーを可視化する(どう表現するのがいいかについて仲間と検討し共有する)
4部構成になっており、段階を経てコミュニケーション能力を伸ばせるような構成になっています。各部の内容は以下のとおりです。各部は5つの課に分かれています。
- 第1部:とにかく話す練習(自己紹介や雑談力を磨くなど)
- 第2部:聞き手を意識する練習(コメント力を鍛える、上手な意見の伝え方など)
- 第3部:内容を整理して説得的に伝える練習(説明のコツ、依頼のテクニックなど)
- 第4部:聞き手の感情に配慮する練習(とっさの一言、ユーモアなど)となっており、段階を経て
この本は教師向けの本で、実際の授業をするにあたってのポイントなども記載しています。
「とっさの一言」や「フィラーにトライ」、「雑談力をみがく」など、他の会話教材であまりないようなトピックもあります。
③新版 ロールプレイで学ぶ 中級から上級への日本語会話
- 山内博之(2014) 新版 ロールプレイで学ぶ 中級から上級への日本語会話. 凡人社
この教科書の特徴は、タスク先行型ということです。
まず、ロールプレイの課題を与え、それをやらせてから、文型や語彙を教えるという流れになっています。
これもクラスで何度か使用したことがありますが、最初のロールプレイはうまくいかないことが多いので、そのうまくいかなかった経験が、その後の文型・語彙の導入のときにいかされるような気がします。
④新・にほんご敬語トレーニング
- 金子広幸. 初級が終わったら始めよう:新にほんご敬語トレーニング. 2014. アスク出版
これは敬語に焦点をあてたものです。場面ごとに敬語が練習できるようになっているので、現在(または将来)敬語を実際に使う場面がある学習者にはおすすめです。
⑤会話に挑戦!中級前期からの日本語ロールプレイ
- 中居順子他 (2005). 会話に挑戦!中級前期からの日本語ロールプレイ. スリーエーネットワーク
これは全22課構成のロールプレイ集です。「医者に症状を伝える」や「自分の国の料理の作り方を教える」など、日本で生活していたら実際に遭遇しそうな状況・場面でのロールプレイを設定しています。
これもまずロールプレイをやってみた後、どんな言語知識・表現が必要だったかをクラスで考えられるようになっています。
そして、再度別の場面でロールプレイを行うという流れで、コミュニケーション力を上達できるようになっています。
特に中級レベルの会話授業で使いやすい教材です。
⑥中上級学習者のためのブラッシュアップ日本語会話―みがけ!コミュニケーションスキル
- 清水 崇文(2013) 中上級学習者のためのブラッシュアップ日本語会話―みがけ!コミュニケーションスキル. スリーエーネットワーク
この教科書は「許可を求める」「依頼する」「誘う」などのスピーチアクトをどう適切にいうかに着目した教科書です。
相手との関係性(上下関係や親疎)により、表現がどう変わるかも学べるようになっています。
⑦中級日本語で挑戦!スピーチ&ディスカッション
- 黒崎典子(2012) 中級日本語で挑戦!スピーチ&ディスカッション. 凡人社
「公の場でまとまった内容のことを話したり議論したりする」ことができるようになるための教材です。
6つのユニットに分かれており、スピーチ・ディスカッションに便利な表現が学べます。ウォームアップなどもしっかりあるので、授業でも使いやすいと思います。
その続編の「もっと 中級日本語で挑戦!スピーチ&ディスカッション」も出版されています。
⑧留学生のための考えを伝え合うプレゼンテーション
- 仁科浩美(2020) 留学生のための考えを伝え合うプレゼンテーション. くろしお出版
中級後半~上級レベルで使える教材です。15課にわかれており、研究発表、発表スライド、質疑応答などの表現を学べます。
便利な日本語表現を学んだり、学習内容に関するタスクなども含まれています。プレゼン指導をする際には役に立つと思います。
⑨日本語教師のための 日常会話力がグーンとアップする雑談指導のススメ
- 西郷英樹・清水崇文(2018)日本語教師のための 日常会話力がグーンとアップする雑談指導のススメ. 凡人社
これはふつうの教材とは違い、「雑談力」をアップするための教材です。
カジュアルな話し方や、雑談に役立つ表現・ストラテジーが学べます。聞き返し方やリアクションの仕方、教科書にはない便利な言葉などが紹介されています。
授業で使ってみたことがありますが、学生の評判はよかったです。
まとめ
中上級学習者のための会話教材について紹介しました。
他にも中級レベルで使える教科書について興味のある方は、以下の記事もご覧ください。
初級レベルで使える教科書について興味のある方は、以下の記事もご覧ください。