SLAとは
SLAとはSecond Language Acquisition(第二言語習得)の略です。1960年頃から活発に研究されるようになった分野です。
このSLAの歴史的変遷について、以下の4つの時代に分けて説明します。
(記事自体は計8記事で記載します。各番号をクリックすると、該当する記事にアクセスできます)
今回は1980年代の発展期についてです。
この時代はSLA研究が発展しますが、主な研究としては以下のようなものがあります。
前回・前々回の記事では「普遍文法」「語用論」関連の研究について簡単に紹介しましたが、今回の記事では「言語環境関連の研究」について紹介します。
インプット・インタラクション関連の研究における3つの仮説
第二言語習得において、学習者に内在する能力だけでなく、学習者の周りの言語環境(特にインプットの重要性)についても研究されるようになります。
これら一連の研究において影響力の強い仮説は以下の3つです。
- インプット仮説(input hypothesis)
- インタラクション仮説(interaction hypothesis)
- アウトプット仮説(output hypothesis)
この3つについて以下で簡単に説明します。
インプット仮説
インプット仮説は、Stephen Krashen(クラッシェン)が唱えたものです。
クラッシェンのインプット仮説は、インプットの重要性を述べており、特に習得が起こるためには理解可能なインプット(comprehensible input)が必要というインプット仮説を唱えました。
クラッシェンは、現段階で理解できるものを「i」と仮定し、それからわずかに高いレベル、つまり「i +1」のインプットを与えることで習得につながると考えました。
- Krashen, Stephen D. The input hypothesis: Issues and implications. Addison-Wesley Longman Ltd, 1985.
インタラクション仮説
クラッシェンは、「インプット」に重きを置いており、あまりアウトプット(産出面)には着目していませんでした。
ただ、インプットだけではなく、相手とやり取り(インタラクション)することで、より習得につながると考えたのがMichael Long(ロング)です。
ロングの仮説は、インタラクション仮説といわれています。
- Long, Michael (1996). “The role of the linguistic environment in second language acquisition”. In Ritchie, William; Bhatia, Tej (eds.). Handbook of second language acquisition. San Diego: Academic Press. pp. 413–468.
特にロングは「negotiation of meaning(意味の交渉)」の必要性を述べています。
これはどういうことかというと、相手とやり取りする中で、相手に確認したり、自分が理解していることを相手に示したり、言い直したり、ゆっくり話すなどして、相手の伝えたいことを明確に理解しようと努力することです。
こういうプロセスを経ることで、さらに言語学習が促進されると考えました。
アウトプット仮説
アウトプット仮説を提唱したのはMerrill Swain(スウェイン)です。
スウェインは、インプットは重要だがそれだけでは十分でなく、アウトプット(産出)する必要があるといいました。
- Swain, Merrill. “Three functions of output in second language learning.” Principles and practice in applied linguistics: Studies in honor of HG Widdowson (1995): 125-144.
スウェインは、アウトプットをすることにより、自分のやりたいこととできることとのギャップに気づいたり、自分のいいたいことが伝わるかを検証したり、言語に関する知識について振り返ったりできると述べています。
これがアウトプット仮説と呼ばれています。
まとめ
1980年頃に研究されていたテーマのうち、言語環境関連の研究について紹介しました。
特にその中でもインプット仮説・インタラクション仮説・アウトプット仮説について紹介しました。
インプット仮説・インタラクション仮説・アウトプット仮説については別の記事で詳しく説明していますので、ご興味のある方はそちらもご覧ください。
- クラッシェンの第二言語習得における5つの仮説とその批判(第二言語学習理論と教授法③)
- ロング(Long)のインタラクション仮説(Interaction hypothesis)について
- スウェイン(Swain)のアウトプット仮説(Output hypothesis)について
次の記事では言語転移関係の研究について紹介しようと思います。