目次
Ruizの枠組み
Ruizは1984年に、以下の論文で言語観(個人や社会が言語やその役割をどう捉えるか)について3つの方向性(orientation)を示しました。
- Ruiz, R. (1984). Orientations in language planning. NABE Journal, 8, 15–34.
3つは以下のものです。
- 問題としての言語(language-as-problem)
- 権利としての言語(language-as-right)
- 資源としての言語(language-as-resource)
この枠組みは今も言語政策について考えるときに引用されています。
① 問題としての言語(language-as-problem)
「問題としての言語」は、複数の言語があることによるマイナス面に焦点を当てた言語観です。
この立場だと、個人レベルでは、複数の言語を使うことにより混乱したり、アイデンティティの危機に陥る可能性があると考えます。
社会的にも、言語の多様性が国家統一の阻害要因になったり、政治的の問題の種となったりすると考えます。
② 権利としての言語(language-as-right)
これは、言語というのが人間の持つ基本的人権の一つと考える言語観で、個人は自由に選んだ言語を使う権利を持っていると考えます。
少数グループの言語保護の動きなどは、この考えに立脚したものが多いです。
国を超えたレベルでも、1996年の世界言語権会議で「世界言語権宣言(Universal Declaration of Linguistic Rights)」が採択されるなどしています。
③ 資源としての言語(language-as-resource)
資源としての言語は、言語というのが個人にも社会にも有益な資源であると考える捉え方です。
言語の多様性が、個人に社会にもプラスに働くという考え方で、言語に価値を見出すものです。
この資源としての言語の考え方は、複言語主義などにも受け継がれています。
まとめ
Ruizの3つの言語観について紹介しました。もっと詳しく知りたい方は以下の本などをご参照ください。
- Hornberger, Nancy H., ed. Honoring Richard Ruiz and his work on language planning and bilingual education. Multilingual Matters, 2016.
↑上記の論文もこの本に収録されています。