会話分析とは何か
会話分析とはそもそも何なのかを、以下の本の第1章第1節・第2節の内容をもとに、まとめます。
- 串田 秀也 ・平本 毅 ・林誠 (2017)会話分析入門. 勁草書房
↑会話分析が生まれた背景や、研究対象や、研究成果、そして方法論などを網羅した本です。
特にありがたいのが事例が日本語で解説されていることで、英語の例を読むより、すぐに頭に入り、理解がしやすいです。
会話分析の研究対象
会話分析が対象にするのは、人と人が相互行為(やりとり)をするときに行使している能力や用いている方法です(串田他 2017, p.6)
例えば「かかってきた電話にこたえる」という1つの行為をとったとしても、私たちは場面によって、「もしもし」、「お世話になっております」、「〇〇社の〇〇です」など複数の方法を知っていて、それをその時々で使い分けています。
電話の最初の一言であっても、その背後には「社会」が存在していて、我々は幅広い知識に参照しながら、そのときどきで適切なものを選択し、相手に応じて調整しながら、やり取りをしています。
このような普段は気に留めないことを詳細に探究することで、人々の社会生活がどう構築されているかを調べるのが会話分析です。
会話分析に影響を与えた理論
会話分析は、1970年頃にSacksらが土台を作りました。
その会話分析に影響を与えた理論としては、以下の2つがあります(串田他 2017, p.7-p.10)
- ゴッフマンの相互行為の自然主義的研究
- ガーフィンクルのエスノメソドロジー
とても有名なGoffman(1974)のフレームとフッティングについてです。原文は読んでいないので受け売りですが・・・。
↑Goffmanについては昔も紹介しました。
Goffmanの相互行為の自然主義的研究
ゴッフマンは、職場の会議、学校の授業、診療、集会など、複数の人々が互いに相手の姿を見たり、聞いたりできる状況を「社会的状況」と呼びました。
そして、その「社会的状況」で行われるやりとりには秩序だった特徴があると考えました。
こういう社会秩序を観察するためには、被験者を集めてアンケートを配ったり、聞き取り調査をしたりして、それをもとに一般理論を組み立てるということが考えらえます。
ただ、ゴッフマンは、そういった研究手法で、早急に理論モデルを組み立てるのを目指すのではなく、ありのままに観察することを重視しました。
具体的には、以下の2つを重視しています。
- 実際の相互行為の中で見られる現象を丁寧に調査し、その現象にもっともあう概念を探し出すこと
- 相互行為で生じているあらゆることをありのままに観察すること
この姿勢は、会話分析にも受け継がれています。
ただし、ゴッフマンの観察・分析よりも、会話分析は厳密な方法論にのっとって、体系的に相互行為を研究しています。
会話分析の方法論を整備するにあたって、参照されたのがガーフィンケルのエスノメソドロジーです。
Garfinkelのエスノメソドロジー
ガーフィンケルはエスノメソドロジーという日常の相互行為を細やかに記述する方法論を提唱しました。
(エスノグラフィーとは違います)。
- Garfinkel, Harold. Studies in Ethnomethodology (1977). Englewood Cliffs, NJ.
- ハロルド・ガーフィンケル (著), 山田他(訳)(1987) エスノメソドロジー―社会学的思考の解体. せりか書房
↑和訳も出ています。
エスノメソドロジーでは、人々が社会的秩序を具体的な状況の中で、どう理解し、調整しているのかを細かく研究しています。
そのときに注目するのは、その場その場、つまり「いま、ここ」のやりとりで、どう社会的秩序が構築され、作り直され、確認されているかということです。
この方法論は会話分析にも応用されています。
まとめ
ゴッフマンやガーフィンクルの理論をもとに、サックスらが会話分析の土台を作りました。
会話分析についてもっと興味のある方は、下記の記事で紹介している入門書などをご覧ください。