教室活動の分析等でよく引用される「Communities of Practice」をやっと読みました。

前の記事でも書きましたが読もうと思っていたWenger(1998)のCommunities of Practiceのp.72-85とそれ以外もぱらぱらと読みました。

  • Wenger, Etienne. Communities of practice: Learning, meaning, and identity. Cambridge university press, 1998.

コミュニティ・オブ・プラクティスについては日本語の本も出ているみたいです(上記と同じ本ではないと思いますが・・)

  • Wenger, Etienne, et al. “コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践.” 櫻井祐子訳, 翔泳社 (2002).
コミュニティ・オブ・プラクティスは、「あるテーマに関心や情熱を共有している人々の集まりで、定期的に交流することを通して、そのテーマをどうよくしていくかを学んでいくグループ」(参考:前回記事)ということでしたが、この本では具体的にコミュニティ・オブ・プラクティスとは何なのかを説明していました。

コミュニティ・オブ・プラクティスでは、コミュニティへの参加(participation)と物象化(reification)を通して、このコミュニティで意味交渉のプロセス(要するにコミュニティにおける実践)が行われるといっています。物象化とは、意味交渉のプロセスを形にするもののことで、道具やシンボル、物語、用語、概念などが挙げられます。コミュニティに参加したり、その中で何か形になるものを作ったりして、コミュニティが維持されていくということだと思います。

コミュニティ・オブ・プラクティスでは意味交渉(実践)が行われるとWengerはいっていますが、その実践は相互の参加(mutual engagement)と、共同の活動(joint enterprise)と共有リソース(shared repertoire)の3つの要素からなるといっています。(p.72-85)

まず、コミュニティではメンバーが参加し、その中で自分の仕事(work)を持ち、様々な人がお互いを補完し合いながらコミュニティに貢献し、反目なども含めた複雑で多様なメンバー間の関係を作り上げていきます(mutual engagement)。

また、メンバーが共同の活動(joint enterprise)に従事します。この共同の活動は複雑なもので、またコミュニティ内で完結するものでなく、それより大きな社会とも関連するものですが、メンバーは共に意味を交渉し合い、その中で相互の説明責任(mutual accountability)を持つようになります。

さらに、メンバーが共同の活動に相互に関与する中で、仕事のルーティーンや言葉遣い、道具など、コミュニティ間の共有リソース(shared repertoire)が作られていきます。このリソースは相互の参加の歴史を示すものであり、根本的に多義的なものです。リソースが多義的なので、また交渉の余地があり、新たな意味も産まれてきます。

ちなみに、Wenger (p.85)はこういった意味交渉の場である共同の実践は美化されるものではないと言っています。コミュニティ・オブ・プラクティスはそれ自体は有益・害があるといったようなものではないといっています。

このコミュニティ・オブ・プラクティスは、私の場合だと教室での学生の活動などを分析するときのいい枠組みになるかなと思いました。応用しやすそうな枠組みなので、ビジネスなどでもよく使われているのも納得できます。