モチベーション研究の変遷
モチベーション(学習同期)は言語学習に大きな影響を与える要素の一つで、研究も多数なされています。
モチベーション研究が現在どういう流れになっているのかをざっくり3つに分けてまとめました。
- 1960年代~1990年代:言語学習におけるモチベーションとは何かというような社会心理学的研究
代表的な研究者:Gardner、Lambert、Clément - 1990年代:心理学の認知理論の視点も取り入れながら、モチベーションに至るプロセスや学習段階なども考慮に入れた研究
代表的な研究者:Noels、Dörnyei、MacIntyre - 2000年以後:モチベーションとアイデンティティの関係性なども取り入れた、「自己」に注目した研究
代表的な研究者:Ushioda、Dörnyei
(上記はモチベーション研究をしている私の知り合いが、説明してくれた分け方です。何かの文献に依拠しているわけではありません)
今日はそのうちの1960年代~1990年代の研究について中心に書こうと思います。
Gardner and Lambert (1972)
GardnerとLambertは、カナダの社会心理学者です。2人は言語学習におけるモチベーションの大切さに着目し、モチベーション研究の嚆矢となりました。
ちなみにGardnerとLambertのモチベーション研究への功績は大きく、最近ではこんな本も出版されています。
- Al-Hoorie, A. and MacIntyre, PD (eds.) Contemporary Language Motivation Theory: 60 years Since Gardner and Lambert (1959). Psychology of Language Learning and Teaching. Bristol, UK: Multilingual Matters
特に、Gardner & Lambert (1972)の提唱した統合的動機付け(integrative motivation)と道具的動機付け(instrumental motivation)という分け方は、今も広く使われています。
- Gardner, R. C. and W. E. Lambert. 1972. Attitudes and Motivation in Second Language Learning. Rowley, MA: Newbury House
統合的動機付け(integrative motivation)と道具的動機付け(instrumental motivation)
「統合的動機付け」とは、自らが学ぶ言語を使うコミュニティ・文化について興味があったり、もっとその言語でコミュニケーションをとりたい、ときにはコミュニティのメンバーになりたいというような、個人的な動機で言語を学ぶというものです。
「道具的動機付け」とは、試験合格や就職など、ある具体的な実利的目標のために言語を学習をするということです。
この分け方は非常に影響力があり、どちらの動機付けのほうが学習を促進するかといった研究もなされました。
全体的には統合的動機付けのほうが学習の成功につながりやすいと言われているようですが、場合によっては道具的動機付けの方が有効な場合もあるようです。
その後の展開
ただ、就職したいなどの「道具的動機付け」で言語学習を始めたとしても、学習の結果、もっとその話しているコミュニティについて理解したいといったような、「統合的動機付け」が出てくることもありますし、モチベーションは上がったり下がったりして、常に変化していくものです。
また、「統合的動機付け」は、その言語が話されているコミュニティへの興味や、そのコミュニティに入りたいなどの欲求ですが、英語のように世界中で話されている言葉については「コミュニティ」とは何なのかというそもそもの問題もあったりもします。
GardnerとLambert以降、多角的にモチベーションが研究されるようになっていきます。