シラバスとは?
シラバスは、そのコースでの学習項目の一覧を記載したものです。
(一般に大学などで「シラバス」というと、学習目標・使用教科書・評価方法・クラスの内容を記載した授業計画を指すことが多いですが、言語教育ではそれは「カリキュラム」といい、「シラバス」は具体的に「何を教えるか」という学習項目を指すことが多いようです(勿論、人によって違いはありますが…))
学習項目を「どう教えるか」という焦点の置き方によって、以下のような種類があります(高見澤孟 2016, p. 31-34)。
- 文法シラバス(grammatical syllabus)
- 構造シラバス(structural syllabus)
- 場面シラバス(situational syllabus)
- 機能シラバス(functional syllabus)
- 話題(トピック)シラバス(topic syllabus)
- 技能(スキル)シラバス(skill syllabus)
- タスクシラバス(task syllabus)
今回の記事では、このうち文法シラバス・構造シラバスとその利点・問題点について述べたいと思います。
文法シラバス・構造シラバスとは
これは基本は文法・文型を中心に授業が組み立てられているシラバスです。
「文法シラバス」の場合は、例えばLesson 1で「主語」、Lesson 2で「述語」、Lesson 3で「名詞」といったように、文法項目で組み立てられているものを指すようです。
「主語、述語、動詞、名詞、助詞」などの品詞別や、「現在形、過去形、受身形、使役形」などの動詞の活用順などの場合もあります。
「構造シラバス」の場合は、「~は~です」「それは~です」「~てもいいです」などの文型を積み上げる形でクラスを組み立てていくものです。
この二つを合わせて「文法構造シラバス」ということもあります。
このシラバスの背景には、「言語というのは文法規則で構成されている」という構造主義的な考え方があります。この文法規則を学び、実生活に応用していくというのがこのシラバスのスタンスです。
文法シラバス・構造シラバスの例
有名な初級日本語教科書の一つに「みんなの日本語」という本があります。
- スリーエーネットワーク (2012) みんなの日本語 初級 第2版
みんなの日本語の第1課の構成は以下のようになっています。
- 〜は〜です。
- 〜は〜じゃありません。
- 〜は〜ですか。
- 〜は〜の〜です。(所属)
- 〜も〜です。
- 〜は〜歳です。
まず「~は~です」という文型を学んだ後に「~は~じゃありません」という文型を学び、その後「~は~ですか」という文型を学ぶことになります。
第2課以降も、「文型」を中心に教科書が構成されています。
(ちなみに、「みんなの日本語」だけでなく、日本語の初級の教科書は、文型積み上げ式の教科書が多いです。)
「みんなの日本語」に沿って、授業を組み立てた場合、このクラスのシラバスは構造シラバスになるでしょう。
文法シラバス・構造シラバスの利点
文法・構造シラバスの利点として以下のようなものが考えられます。
- 簡単な文法・文型からどんどん難しいものへと積み上げていくことができるので、学びやすいし、教えやすい。授業も組み立てやすい。
- 体系的に言語を学ぶことができる。
言語知識が限られている学習者に、「場面シラバス」(後の記事で述べます)のように「場面」ごとに使う表現などをどんどん入れていくと、複雑な文型が突然出てきて、学習者が混乱してしまうおそれがあります。
文法・構造シラバスの場合、「私は学生です」を学んだ後に、「私は大学の学生です」を導入するなど、少しずつ段階を踏んで複雑な文法を学んでいくので、文法が学びやすいといえるでしょう。
文法シラバス・構造シラバスの問題点
問題点としては、以下のようなものが指摘されています。
- どういう状況でその文型を使えばいいのかわからない。
- 実際の使用頻度とは関係なしに文型が出てくる。
文型中心で学ぶと、実際の使用という面では問題が出てくる場合があります。例えば、「~は~です」という文型は知っていても、いつどう使えばいいかわからないなどといったこともでてきます。
また、実際の会話でよく使われる文型も、文型が複雑だからという理由で後回しにされることもあります。逆にあまり使われないのに早い段階で出てきたりといったこともあり、実生活のニーズに合っていないという問題もあります。
まとめ
今回はシラバスの種類のうち、「文法シラバス」「構造シラバス」について紹介しました。
どのシラバスも利点と問題点があるので、実際には2つ以上のシラバスを併用することもあります。
他のシラバスについて興味のある方は以下の記事もご覧ください。