シネクドキ(堤喩)とメトノミー(換喩)の違いについて

比喩表現とは?

比喩表現というと、文学等で使われる表現技法の意味で使われることが多いですが、認知言語学では、比喩表現は一般的な認知能力の一つとしてとらえられています。

なので、文学等で使われるものとは意味合いが違うので、注意が必要です。

比喩表現の中には、メタファー(隠喩)の他、メトノミーやシネクドキという種類があります。

 

シネクドキ(堤喩)

必要に応じて柔軟に、自分の中にあるカテゴリーを伸縮するというのも認知能力の1つといわれています。

つまり、ある言葉が本来の意味よりも狭い意味を示したり、逆に広い意味を示すことになることがあり、これを「シネクドキ」(堤喩)といいます。

 

例えば、「卵、買ってきて」と家族にいわれたときに、以下のような鶏の卵をイメージすると思います。

 

卵というカテゴリーには、鶏の「卵」だけでなく、魚や虫の「卵」も含まれますが、「卵、買ってきて」といったときは、「卵」というカテゴリーが、下位カテゴリーである「鶏の卵」という狭い意味になっています。

 

他の例は「花見」です。

「花見」というと、

 

「チューリップ」「ひまわり」など花はたくさんありますが、桜を思い浮かべる人が多いと思います。

これも「卵」と同様、「花」という上位カテゴリーが、「桜」という、狭い意味の下位カテゴリーを示している例です。

 

この2つの例は、意味が狭くなる例でしたが、意味が広くなる例としては、「お茶のみにいかない?」という表現があげられます。

「お茶」というと「茶」のことですが、普通「お茶、飲みにいかない?」というと、「お茶」という下位カテゴリーでなく、ジュース、コーヒーなどを含んだ上位カテゴリーである「飲み物」(さらには、ケーキなどの「軽食」)を指すと考えられます。

 

 

また「ごはん、食べにいこう」も下位カテゴリーを使って、上位カテゴリーを説明しています。

「ごはん」というと、厳密にいうとお米のことです。

ただ「ごはんを食べにいこう」といったときは、お米だけを食べるのではなく、その他のおかずや飲み物などの「食事」という上位カテゴリーを指します。

このように、シネクドキとは、上位カテゴリーを下位カテゴリーで表現したり、また逆に下位カテゴリーで上位カテゴリーを表現することを言います。

 

メトノミー(換喩)

メトノミー(換喩)は隣接性に基づくものです。つまり、Aをいうことで、それと隣接関係にあるBを表現することです。

 

例えば、「扇風機が回っている」という表現があります。

この場合、「扇風機全体」が回っているのではなくて、実際に回っているのは扇風機の「羽根」の部分で、扇風機の一部です。

「扇風機が回っている」ということで、その一部である(隣接関係にある)「羽根」を指しています。

 

「やかんが沸いた」というのもメトノミーと言われています。

 

 

実際に沸いたのは「水」なので、「やかん」を使って隣接関係にある「水」を指しています。

また、「うちにNHKが来た」というのもメトノミーです。この場合も、「NHK」というテレビ局ではなく、「NHKの受信料の集金人」という隣接した別のものを指しています。

 

メトノミーも意味が拡張した例と言われます。例えば、上の例だと「やかん」という概念が、やかんだけでなくその中に入っている「水」まで拡張したと考えられます。

 

シネクドキはあくまで上位カテゴリー・下位カテゴリーの関係でしたが、メトノミーはカテゴリーは違うが隣接している(つながっている)ものという点で区別されるようです。

 

まとめ&ご興味のある方は

シネクドキとメトノミーは区別が難しいものもあるようで、メトノミーの中にシネクドキを含めることもあるようです。

 

ご興味のある方は以下の記事もご覧ください。

 

詳しく知りたい人は下記の入門書がおすすめです。

 

  • 籾山洋介. 日本語研究のための認知言語学. 研究社, 2014.

↑数年前に読みましたが、わかりやすく認知言語学の概念などを紹介していて、よみやすかったです。

 

  • 荒川洋平, ‎森山新. わかる!! 日本語教師のための応用認知言語学. 凡人社, 2009.
↑この本も短くコンパクトに応用言語学の概念を紹介し、それをどう授業に応用するかのアイディアも紹介しています。