「うれしい」と「楽しい」の違いについて

参考本

「うれしい」と「楽しい」の違いについてまとめておきます。参考にしたのは以下の本です。

  • 岡本牧子・氏原庸子  (2010) くらべてわかる 初級:日本語表現文型ドリル.  Jリサーチ出版

↑初級の学習者によく聞かれるような、55の文型や語彙の使い分けが説明されています。

練習問題もついているので、非常にわかりやすく、学習者に説明するときにも大変参考になります。

 

「うれしい」と「楽しい」の違い

①ある人・ものの性質は「楽しい」

ある人やもの、ある状況の性質を表すときに「楽しい」は使えますが、「うれしい」は基本は使いません。

  • 〇私は楽しい人が好きだ。(×私はうれしい人が好きだ)
  • 〇柔道は楽しい。(×柔道はうれしい)
  • 〇楽しい映画を見に行きたい(×うれしい映画を見にいきたい)

「うれしい」はあくまで、話し手の感情をいうときに使うようです。

 

②喜びの感情が出てきたときは「うれしい」

ある場面や状況であらわれた喜びの感情を表すときは「うれしい」を使います。

  • 〇試験に合格した!うれしい。(?楽しい)
  • 〇やっと春が来て、うれしい(?楽しい)
  • 〇Aさんが元気にしていると知って、うれしい。(?楽しい)

この場合、「試験に合格した」「春が来た」「Aさんが元気にしていると知った」ことで、喜びの感情が芽生えたと考えられますが、この場合は「うれしい」を使います。

「楽しい」は長く、「うれしい」は一時的、と言われることもあります。

楽しいは、継続的にいい気分が続いていたときに使われることが多いようです。(上記の岡本・氏原の本だと「その場の雰囲気がとてもよく、明るく満足した気分になる」(p. 52)と説明していました。)

例えば、

  • 〇昨日のパーティーは楽しかった。(?うれしかった)
  • 〇大学時代は本当に楽しかった。(?うれしかった)

上記の状況のときは、「パーティー」や「大学時代」が全体的にどうだったかということを言っているので、「楽しい」を使うことのほうが多いのではと思います。

「楽しい」は、ある程度、長い時間継続している気分を指せるからこそ、人・ものの性質を表すときにも使えるのかもしれません。