田中ゆかり(2016)「方言萌え!?――ヴァーチャル方言を読み解く」読了。

方言萌え!?――ヴァーチャル方言を読み解く

以下の本を読みました。ジュニア新書なので非常に読みやすかったです。

  • 田中ゆかり(2016). 方言萌え!?――ヴァーチャル方言を読み解く. 岩波ジュニア新書

田中ゆかりについては、役割語関連で名前を何度か聞いたことがあり、「方言コスプレ」というインパクトのある名前の本も出版していたことから、気になっていました。

1960年ごろは方言はマイナスなイメージが強かったようですが、標準語が普及し、方言が衰退するに従い、方言をポジティブにとらえる動きも増えてきたそうです。2000年代になると、SNSなどの「打ち言葉」と相性がよかったこともあり、大阪の人でなくてもあえて大阪弁を使うなど「方言コスプレ」が盛んになったと言っていました。後半部ではドラマでの方言使用についても言及していました。

「方言」が、ある地域で話される言葉にとどまらず、「役割語」と同様、ある特定の人物像やステレオタイプと結びついているということかと思います。そのステレオタイプをあえて使うことによって、仲間意識を強くしたり、自分の個性を出したり、「真正性」などの付加価値をつけたりしているのかなと思いました。

生育地

なお、方言に対する意識調査をする際には、田中は「生育地」という概念を使っているようです。

生育地というのは15歳まで自分が一番長く生活した地域ということだそうです(参考:田中・前田 (2012) )。

確かに「あなたの方言は何ですか」と直接聞くと、例えば同じ大阪に生まれ育った人でも、「関西弁」「大阪弁」「河内弁」など人によって言い方に違いも出てくるでしょうし、幼少期が言語形成に影響を与えることを考えると、生育地で聞くというのはこういった意識調査では効果的だと思いました。

こういう意識調査をしている人の間では、当たり前のことなのかもしれませんが、参考になりました。

  •  田中ゆかり(2011)「方言コスプレ」の時代――ニセ関西弁から龍馬語まで. 岩波書店.