相互行為能力(interactional competence)についての論文
相互行為能力は、会話分析でもよく出てくる概念なのですが、それについて少し調べてみました。
相互行為能力でよく引用されるのは以下のような論文があります。
- Young, R., & He, A. W. (Eds.). (1998). Talking and testing: Discourse approaches to the assessment of oral proficiency. Philadelphia, PA: John Benjamins.
今回の記事を記載するにあたって参考にしたのは以下の論文です。
- Young, R.F. (2011) Interactional competence in language learning, teaching, and testing. In E. Hinkel (Ed.), Handbook of research in second language teaching and learning (Vol. 2, pp. 426–443). London: Routledge.
↑この本に収録されています。
相互行為能力とは
相互行為能力というのは、ざっくりいうと、その場その場で、相手との関わりの中で、会話に参加し、行為を遂行していく能力のことを指すようです。
従来のcommunicative competenceやpragmatic competenceなどは、あくまで能力は個人が保有している知識やスキルという暗黙の前提がありました。
ただ、会話がうまくいくかどうかというのは、自身が知識・スキルを持っているかだけではなく、会話の中でいかに相手と関係性を構築できるかにもかかっています。
例えばとても高い能力を持っていたとしても、苦手な相手と話すときはうまく話せなかったり、あがり症の人だと人前だと自分の能力を発揮できなかったりします。また、自分がうまくできたと思っても、相手がそう思わなければそれはうまくいったとはいえません。
こういったことを考えると、能力というのは、ある特定の場面で、会話に参加する全員がどう会話を構築できるか、行為を遂行できるかということにもかかわってくるのではと考えることができます。それに着目したのが相互行為能力のようです。
相互行為能力の特徴
Young (2011)は、相互行為能力の定義は多様であることを指摘したうえで、この概念の基礎となる以下の4点を挙げています(ざっとあげただけなので詳しくは原文に当たってください)。
- 基本は書き言葉ではなく、会話に注目している。
- 社会的規範がいかに発話に影響を及ぼすのかなど、言語の語用論的側面に着目している
- 個人に内在する知識・スキルではなく、会話に参加するすべての者が、どう言語や、ジェスチャーなどの非言語資源を使って会話を構築しているかに着目している。
- ただそこで起こっているインタラクションをみるだけでなく、その背後にある社会・政治・歴史的背景にも着目している。