日本語学習者の終助詞「ね」の習得に関するSawyer (1992)の論文について①

Sawyerの論文

ずいぶん前に読んだ論文ついてです。

  • Sawyer,  Mark. “The development of pragmatics in Japanese as a second language: The sentence-final particle ne.” Pragmatics of Japanese as a native and foreign language 3 (1992): 83-125.

 

この本では日本語学習者の間の終助詞「ね」の習得について調べていました。「ね」に限らないと思いますが、終助詞は日本語学習者の中では習得しづらい項目の一つとして挙げられています。

 

日本語母語話者の「ね」の習得について

この論文では、学習者だけでなく、日本語母語話者の「ね」の研究を行ったClancy (1986, 1987)の研究も紹介していました。

Clancy (1986)によると、終助詞「ね」は幼い時に習得されるようです。ただ、終助詞「ね」というのは、聞き手の感情をおもんばかって使われるという先行研究もあり、それを前提とすると、基本的に幼い子供がどうして聞き手に配慮するなんていうことができるのかとの疑問もでてきます。

 

 

 Clancy (1987)はその後も研究を行い、終助詞「ね」というのは母親がプラスの感情を示すときに使われることが多く(おそらく「すごいね~」とか「いい子だね~」など)、そのプラスの感情と関連付けされることで習得されるのではといっているそうです。

↓Clancyの論文は下記の本にも収録されているようです。

  • Clancy, Patricia M., 1986. The acquisition of communicative style in Japanese. In Schieffelin, B. & Ochs, E. Language socialization across cultures 1986,213-250.
  • Clancy, P. M. (1985) Acquisition of Japanese. In D. I. Slobin (ed.) Crosslinguistic Study of Language Acquisition. Vol.l: Data. New Jersey: Lawrence Erlbaum Associate, pp.373 524.

日本語学習者の「ね」の習得について

学習者の「ね」の習得については、このSawyerの論文が出た時点では、あまり先行研究がなかったようです。

先行研究で紹介されていた一つにHiraike-Okawara・Sakamoto (1990) の論文がありました。この論文によると、日本語母語話者間の会話のほうが、日本語母語話者と中級前期の日本語学習者の間の会話より、終助詞「ね」や「な」が4倍ぐらい頻出したそうです。

この理由としては、日本語母語話者が、中級前期の学習者はこのような終助詞を知らないだろうと思っていた事があげられるようです。

 

長くなるのでSawyerの研究についてはまた次の記事で、紹介できればと思います。