工藤真由美(1995)の「アスペクト・テンス体系とテクスト」
日本語のテンス・アスペクトについてもっと詳しく知りたい人には以下のような本があります。
- 工藤真由美. 『アスペクト・テンス体系とテクスト: 現代日本語の時間の表現.』 (1995).
この本ではテクストにおけるアスペクトとテンスの機能を論じています。
「テイル形」の意味について
工藤は「テイル」の意味として以下の4つを挙げています
- 継続性
- パーフェクト性
- 反復性
- 単なる状態
工藤は基本的な「テイル形」の意味は「継続性」だといっています。
例えば、以下の文があったとします。
- 私はご飯を食べている。
こういう「テイル」の場合、意味は、その動作が継続しているという意味になり、これが基本の意味になります。
また、工藤は「-テイル」の派生的な意味として、「反復性」「パーフェクト」「単なる状態」の3つがあるといっています。
パーフェクト性・反復性・単なる状態
例えば、派生的な意味の例としては、以下のようなものがあります。(p. 38、p. 97-98の例を一部省略・修正して記載したものです)
- 私が帰郷したときには、父は3時間前に死んでいた(パーフェクト性)
- あの頃は、よく、人が結核で死んでいた(反復性)
- この道は曲がっている(単なる状態)
工藤はパーフェクトを以下のように定義しています。
- ある設定された時点において、それよりも前に実現した運動がひきつづき関わり、効力をもっていること(p. 99)
上記(1)の場合のように、「帰郷した」という時点において、「父が死ぬ」という動作(工藤の言葉では「運動」)が引き続き効力を持っている場合、「テイル形」を使います。このときに「私が帰郷したときには、父は3時間前に死んだ」とはいいません。
その他
上記の本では、時間の従属複文や、愛媛県の宇和島方言のアスペクトなども扱っていました。
工藤は2014年に以下の本も出版しています。
- 工藤真由美. 『現代日本語ムード・テンス・アスペクト論』ひつじ書房, 2014.