「うん」 と 「そう」 の言語学
下記の本を借りてきました。
- 定延利之(編). 「うん」 と 「そう」 の言語学. ひつじ書房. 2002.
編者の定延は、視点がユニークで、最近は、「流暢」に聞こえるような「非流暢な」話し方や、「面白い話」のコーパスづくりなどを研究しています。
会話の中の「うん」と「そう」-話者性の交渉との関わりで― 串田秀也
今回はこの本に収録されている以下の論文を読みました。
- 串田秀也「会話の中の「うん」と「そう」-話者性の交渉との関わりで」(p. 5-46)
会話分析の立場から、会話の中の「引き取り」の場面で、「うん」と「そう」がどう使用されているのかを分析し、この2つのふるまいについての仮説も提示していました。
「引き取り」というのは、一人の話し手が話しているときに、聞き手が発話に入り、どちらが話者なのかあいまいになるような場面のことをいうようです。
本書のp. 7の例をあげると(細かい書き起こしなどは適宜省略しています)、以下のようなものがあります。
B: そうだって。あたしあれやったのにさ。
A: 来る直前だもんね。
B: そうそうそう
この場面では、Bが話しているときに、AがBの話している内容に「来る直前だもんね」と、もう一人の話し手として参入しています。
串田による「うん」と「そう」のふるまいの違い
この「引き取り」の場面で「うん」と「そう」はふるまいが違うようです。
「そう」の場合は、相手の発話が自分の発話に役に立った(串田の言葉では「独自の貢献」をした)とみなして、さらに話者が発話を続けるときに使う時に使われるようです。相手のいったことを組み入れて、さらに話を続けるという感じかなと思います。
「うん」の場合は、相手の発話を自分の発話に組み入れるというより、相手のいったことを「聞き留めた」という役割が強いらしいそうです。相手の言うことは聞くことは聞いたけど、自分は自分の話を続ける(または発話を終わる)という感じかなと思います。
この場合、特に相手の言ったことは、自分の発話には役には立っていない(串田の言葉では「独自の貢献」はしていない)ようです。その「聞き留めた」というのは「わかった」と承認する場合と、否認する場合、どちらにもつかわれるようです。
例などは詳しく本文に書いてあったので、興味のある方はそちらをご覧ください。
あまり「うん」と「そう」について今まで考えたことはなかったですが、考えてみると奥が深そうですね。他の収録論文も読んでみようと思います。